No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2010年4月3日 炭焼喰人

月に一度は横浜の実家に行くのだが、今回は2つの目的を持って横浜に向かった。
1つは昨年まで住んでいた”たまプラ”での花見、もう1つは”炭焼喰人”での熟成厚切り肉。
若干の寒さもあり、花見を早々に切り上げて本来の目的地(?)へ急いだ。
ユッケは味が濃いお肉が使われているが、タレがちょっと濃く感じる。

最近は色々なタンを食べ比べする機会に恵まれているが、今回はドライエイジングウェットエイジングの2種類の熟成方法の違う黒タンの根本の食べ比べ。
“炭焼喰人”の厚切り上タンは、他のお店では決して食べることのできない様な2センチを超える厚さが特徴だが、今回は食べ比べて違いを感じやすいように、約1センチの厚さでお願いした。

ドライエイジングのタン元は、噛む毎に心地良さを感じさせ、何より旨みが非常に濃厚。

ウェットエイジングのタン元は、サクサクとした食感に違いはあまり感じないが、ジューシーさは明らかにこちらの方が強い。
ただ、旨みはドライエイジングには及ばないようだ。

個体差による違いがあるので一概には言えないが、旨みの濃さを求めるならドライエイジング、ジューシーさを求めるならウェットエイジングなのかもしれない。
ここまで上質なタン元だと、あとは好みの問題なのだろう。
私の場合は、甲乙つけ難いが、僅差でドライエイジングが好みかなぁ。
それにしてもこの食べ比べは次回もぜひお願いしたいものだ。

厚切り上ハラミは、虎の穴風に噛み千切るように食べる。
肉繊維にパンパンに詰まった旨みが口いっぱいに溢れて、言葉にしがたい旨さ。

厚切り上ロースはハネシタ、トモサンカク、イチボの盛り合わせにしてもらった。
ハネシタは筋が入りやすいので、厚切りよりも薄切りの方が食感の良さを楽しめて好きなのだが、今回の厚切りのハネシタは想像を超える柔らかさ。
甘みも非常に強く、厚切りでこんなに旨いハネシタは久しぶりに食べた。


トモサンカクは、先程のハネシタに負けない細かなサシがびっしりと入っている。
柔らかさはハネシタに及ばないものの、赤身の風味はこちらの方が感じられる。

イチボはハネシタ、トモサンカクに比べると甘みは弱めだが、旨みの濃厚さは一番。
元々のお肉が良いこともあるが、上手に熟成を加えたお肉の旨さを一番感じさせてくれたのはこのイチボだろう。

薄切りタレでお願いしたシャトーブリアンは、口の中で肉繊維が解ける感触で、しっとりとした旨さ。

カルビの王様は、サシの見事な三角バラ。
サシの甘さを堪能する為に、タレをたっぷりつけてご飯を巻いて食べるのが王道だろう。
ただ、赤身部分の柔らかさに対して、口の中に筋が残る感じがある。
赤身部分は熟成によって旨みと柔らかさが増すが、脂は熟成によって旨くなるような印象はあまり受けないなぁ。
バラはあまり熟成に向かないのだろうか!?


最後は"お試し"として、F1去勢のササミを出してもらった。
“炭焼喰人”は黒毛和牛の雌に拘っているが、このF1は試験的にお店で熟成を加えてみたものだそうだ。
熟成によって風味はあるが、旨み自体はやはり薄い。
ただサシは少なめだが、熟成によって柔らかさはあるので、柑橘系のモミダレでもんだら、ご飯が進みそう。
和牛に拘りながらもこういった研究を熱心に余念がないのは、伸びているお店の特徴なのだろう。

以前の”炭焼喰人”は、肉質が突出して良かったが、タレやサイドメニューが肉質に追いつかずに、バランスが若干悪い印象があった。
しかし今回は肉質も更に向上して、全体的なバランスも良くなっている。
こういった一生懸命さがお客さんに伝わるお店には、ぜひ今後も頑張って欲しいものだ。
唯一の心配事といえば、厚切り肉をベストのタイミングに焼き上げられないお客さんがいるかもしれない、ということだろうか。
自信がない方はぜひ店員さんに確認しながら焼いて欲しい。
もしくは私と一緒に焼きましょう(笑)