No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2012年8月1日 かわむら


日本一予約の取れないステーキ屋さん。
そして、予約の困難さだけでなく、素材、焼き方、ホスピタリティ等の全ての要素から日本一と呼ばれるステーキ屋さん。
品種、性別、等級、熟成方法、熟成期間、肥育期間、血統、肥育牧場、熱源、火入れ、、、、、
今考え付くありとあらゆることを自分なりに研究し、試した。
そう、自分にとって機は熟したのだ。
今まで研究してきた集大成として、どうしても『日本一』と呼ばれる"かわむら"のステーキが食べたかったのだ。
そして、7年近く続いた片思いの末、遂に念願かなっての訪問となった。
感無量であるが、先入観で過大評価もせず、過小評価もせず、ただ純粋にその世界に飛び込んでみた。
"かわむら"にはメニューがないので、河村さんと話しながらその日のコースをお願いする。
お肉以外の食材も最高の物を取り揃えていて、どれもが素晴らしいと聞いてはいるが、それでもお肉だけのコースをお願いした。
前菜も勿論お肉だけで、いくつか出してもらったが、そのほとんどがヒレが使われている。
お肉の味がストレートに伝わっきて、素材の良さが十二分に分かる。
また、味付けも素材をうまく活かしている。
黄金色のコンソメスープは、ヒレだけで出汁をとっているとは思えないほど牛肉の味が凝縮していて、一口飲んだ瞬間に、牛肉を食べているような旨みに驚かされた。

その厚さに反して、ずいぶん短い揚げ時間だったのはヒレカツ
サクッと揚がったヒレカツの断面は赤みが強く、かなりレアな仕上がり。
これもシャトーブリアンを使った贅沢な一品。



ヒレステーキは専用の炭火のロースターで弱火で焼かれているが、想像していたよりは火力があり、焼き色が付くのも早い。
40分程度焼かれたヒレステーキは、惚れ惚れするような断面で、中のピンク色の部分は驚くほど柔らかで軽い。
まさに私がヒレに求めていた火入れ。
河村さんは、旨みより食感とのど越しを重視しているとおっしゃっているが、旨みもしっかりと兼ね備えている。


そしてハンバーグもヒレから。
今まで食べたことのないスッキリとした味わいで、とてもハンバーグとは思えない。


最後は牛丼で〆だが、ここで初めてロースが登場。
脂の甘さよりも割り下の上品な甘さが活きている。

初めて自分よりもヒレへの陶酔度が高い人を見てしまった。
世の中の人全てに対してNo.1かどうかは分からないが、Only Oneステーキ屋さんであることは間違いない。
そして、私にとってはNo.1のステーキ屋さんに巡り会えた記念すべき体験であった。
最後に河村さんとゆっくりとお話しすることができ、自分の肉人生の進むべき方向が見えた気がした。