No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年4月25日 都内某所


3月に関西に行った際に"くいしんぼー山中"で食べたお肉には、頭をたたかれたような衝撃があった。
今まで食べてきたお肉とはちょっと違ったベクトル。
そして忘れられないほどの感動があったのだ。
あまりにそのお肉の事が頭から離れないので、"くいしんぼー山中"が契約している牧場直営の精肉店からお肉を取り寄せてしまった。
シャトーブリアンはその牧場のお肉ではなかったが月齢30ヶ月以上の雌の近江牛

ステーキにして食べると、普段食べている5番の雌のような肉繊維がほどける食感はないが、それでも十分の柔らかさがあり、何より驚かされるのは後から後から押し寄せる力強くて深みのある旨み。
"くいしんぼー山中"で食べたお肉の牧場とは違ったが、その直営精肉店で扱っているだけあり、同じようなベクトルのお肉のようだ。
既存の概念を破壊するほどの旨さだ。

シャトーブリアンはビフカツにもして食べた。
噛んだ瞬間は赤身が衣に負けている感じがして、ビフカツよりステーキの方が向いている気がしたが、噛み進めていくうちにその旨みが溢れ出し、得も言われぬ旨さに驚くしかなかった。

ロースは"くいしんぼー山中"と同じ個体と滋賀県産ではない長崎県産の30ヶ月以上月齢の雌であった。
長崎県産の黒毛和牛のロースは普段食べているロースと似たベクトルで、脂の甘みと赤身の旨みがしっかりとしていてバランスが良い。

"くいしんぼー山中"と同じ個体のロースは、未体験の弾力で硬めの食感。
これは外国産の詰まった硬さではなく、屠畜してから数日であることによる弾力ではないかと考えている。
が、本当の理由は分からないし、同じように屠畜してすぐ食べさせる"くいしんぼー山中"では、ここまでの弾力は感じなかった。
味わいは、これも噛んでいく毎に溢れる旨みが感じられる。
また、端っこの脂の部分の脂が軽くてまろやかな甘みなのが印象深い。

最後は"くいしんぼー山中"と同じ個体のササミを塩とタレを使って焼肉で楽しんだ。
脂のインパクトは普段食べている個体の方が強く感じるが、まろやかな優しい脂。
そして赤身の味わいが主張してくる感じで、これは焼肉というよりステーキで食べてみたい。

京都での衝撃的な出会いから1ヶ月。
東京で再会したあのお肉はやはり今まで食べてきたお肉とはちょっと違ったベクトルであった。
"かわむら"の焼き方で感じた『Only One』という感覚を、このお肉からも感じる。