No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年5月30日 トロワフレーシュ TROIS FLECHES



もし最高の黒毛和牛のヒレやサーロインが手に入ったらどうやって食べたいだろうか。
焼肉は勿論だが、黒毛和牛ならすき焼きやしゃぶしゃぶも捨て難い。
だが、最もその素材のポテンシャルを堪能するのであれば、私はステーキで食べたい。
できれば備長炭を使用した炉釜で焼き上げたステーキであれば言う事が無い。

"トロワフレーシュ"は拘り抜いた長期肥育の雌の黒毛和牛や短角牛を炉釜で焼き上げてくれる最高峰のステーキ屋さん。
昨年1年間で言えば、"かわむら"と並んで最も印象深かったステーキ屋さんと言える。
基本的には短角牛のサーロイン、黒毛和牛のサーロイン、黒毛和牛のヒレが用意されていて、まずは食べたいお肉の種類を量を決めるのだが、これが実に楽しい。
当然の事ながら全種類食べますよ。

短角牛のサーロイン
前回"トロワフレーシュ"で短角牛を食べた時には、そのあまりの旨さに言葉を失い、黒毛和牛以外の牛肉をかなり食べて回る発端にもなった。
今回の短角牛を一口食べて正直拍子抜けしてしまった。
"マルディグラ"や他のお店で食べた短角牛と比べても絶対的に旨いのだが、前回のあの衝撃が強すぎて、そこを基準にしてしまうと残念ながら不満が残ってしまう。
ちなみに店主にこの事を告げたのだが、前回私が食べた短角牛を覚えていており、前回のものは本当に素晴らしく、今回はあそこまでのものが入らなかったとのことであった。
これは次回に期待するしかない。
満足度 4



黒毛和牛のヒレ
まず焼き上がり。
"かわむら"のようなヒレに対してどこまでも優しく火を入れた焼き上がりではなく、炉釜らしく表面に紙1枚分の焼き目をつけ、内部の旨みを十分に膨らませた焼き上がりだ。
私も普段ヒレに対しては"かわむら"的な火入れを目指しているが、牛肉自体にここまで力強さがあると、この炉釜の焼き上がりはまた1つの答えを感じさせてくれる。
そして肝心の素材も素晴らしい。
しっとりとした食感に加えて、一噛み毎に口の中で広がる牛肉の存在感。
その旨みは喉を落ちるその瞬間まで広がり続けるようだった。
満足度 5+



黒毛和牛のサーロイン
黒毛和牛のサーロインのステーキは本当に難しい。
まずはその素材自体だが、サーロインの脂の質が出やすい部位なので、よっぽど脂質の良い個体でないと厚切りのステーキにするとくどさを感じる。
最近の赤身好きが増えているのも、こういったサーロインがなかなか食べれないことも原因の1つかもしれない。
もう1つは焼き方。
サーロインという部位を最も昇華させることができるのが炉釜だろう。
他の焼き道具では温度が足りなくて、この紙1枚の焼き上がりを実現することはできない。
そういった全ての問題をクリアーしているのがこの"トロワフレーシュ"だ。
赤身と脂が互いに引き立てあい、また絶妙なバランスを保ち、口の中で一気に弾けるように旨みが広がる。
これこそが黒毛和牛のステーキだと再認識せざるをえない。
満足度 5++




素材と調理のその両方が本物。
最近ではこの本物と出会うことが難しいのかもしれないが、もし本物に出会いたいと思っている肉好きの方がいるのであれば、この"トロワフレーシュ"を訪れてみて欲しい。