No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年9月5日 哥利歐


先日の初"あら皮"は私にとって本当に衝撃的な出来事だった。
食べたこともないにもかかわらず、自分の狭い経験からの想像だけで勝手に自分の中で評価し、何年もの間未訪であった。
大いに反省すべきことだ。
それと同時にあの感動は私の心に刻み込まれた。
あんなお肉がある。
あんな牛を育てる生産者がいる。
これを喜ばずにいられるだろうか。
そしてあの生産者のお肉がまた食べたい。
翌日にはこの思いがすでに私の中を支配していた。
今回の"哥利歐"訪問は必然と言える。

実は"哥利歐"は初めてではない。
数年前に一度来たことがあり、私の本物のステーキデビューを飾ってくれたお店なのだ。
ただし、その頃はまだこの三田牛の凄さが分からなかった。
勿論旨かった。
ただ、他のステーキや焼肉と比べて圧倒的に旨かったのか、と言われれば、正直なんだかよく分からなかった。
「これが高級ステーキなんだぁ」という思いを抱えて帰路についたことを憶えている。

あれから何年経っただろうか。
あの頃に比べ牛肉を追求する思いも、経験も数倍膨らんだ。
そして食べたステーキは本当に旨かった。
リブロース寄りのサーロイン。
お店の方もおっしゃってたが、普段よりもサシが多い個体であったが、このサシに押し込まれているサラサラの甘み。
赤身は舌触りがなんとも滑らか、そして噛み締める度に膨らむ旨み。
驚かされるのはちょっと冷めてしまった時。
普段食べているお肉とは冷めた時の脂の質感が全くの別物であった。

やはりこの生産者、勢戸さんの牛は恐ろしく旨い。
個体としては前回"あら皮"で食べた方がワンランク凄かった。
それでもこの"哥利歐"の個体は今まで食べてきた牛とは違ったベクトルで、しかも針を振り切ってしまっているレベル。
ちなみに血統は丸宮土井-福芳土井-照長土井の月齢35ヶ月の雌の純但馬。

あ〜こんな凄いお肉を食べてしまうから肉への探究心が燃えてしまって仕方ないのだ。
兵庫の川岸さん、勢戸さん、田村さん、近江の岡崎さん、福永さん、岩手の佐々木さん。
他にも拘りぬいた黒毛和牛の生産者は全国にいるのだろう。
まだまだ私の知らないお肉があるはず。
もはや我慢できないので来月か再来月、必ず牛を学ぶ遠征に行ってみせる。