No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年9月26日 都内某焼肉店


何年経っても忘れられない牛肉がある。
初めての遭遇は15年以上前だろうか、"うかい亭"で食べた鳥取の田村さんの田村牛。
それからは伊勢原の渡辺さんの古代牛や兵庫の川岸さんの神戸牛、滋賀の福永さんの近江牛は鮮明に私の記憶に刻まれている。
そして最近知ってしまったのが兵庫の勢戸さんの三田牛だ。
噛み締めた瞬間に脳天まで走る味わいの衝撃は、その生産者をマエストロと呼ぶに相応しいことを教えてくれる。
その勢戸さんの牛肉のことをもっと知りたくて、焼肉屋さんに持ち込んで食べてしまった。
勢戸さんは三田でマルセ畜産グループを持っていて、今回は勢戸さんの息子さんの肥育した純但馬(丸宮土井-菊宮土井-照長土井)の月齢35ヶ月の雌牛。
ちなみに個体識別番号は【0844312635】


イチボ
存在感を放つ見事な肉色は月齢の長さを教えてくれる。
塩で食べるとその素材のポテンシャルの高さがよく分かる。
更に次はタレで食べると、更に2ランクほど旨さが跳ね上がる。
これは素材を引き立てるタレと素材そのものの力だろう。
満足度 5

シャトーブリアン
純度の高いジュースを含ませた繊維を丁寧に丁寧に束ねたような芸術品といったところか。
とにかく今まで凄いシャトーブリアンを食べてきたつもりだが、それらを霞ませる程にインパクトを与えられる凄さ。
飲み込む瞬間まで旨みが口の中で膨らみ続ける。
ちなみに我ながら素晴らしい焼き上がりだったことも付け加えておこう。
満足度 5+


サーロイン
ここまで肌理の細かさを感じさせてくれるサーロインなどあるだろうか。
今まで食べてきたサーロインと一線を画すような滑らかさは、上品でありながらどこか怪しげな魅惑を感じさせてくれる。
それは赤身の濃厚さと脂の軽さの限界点を突き詰めた結果なのかもそれない。
満足度 5++




最近考えさせられていたブランド牛のあり方。
勢戸さんの牛肉を食べて、その答えを少し感じることができた。
そして、こんな凄い黒毛和牛が存在することをもっと多くの人に知ってもらいたいものだ。