No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年10月26日 トロワフレーシュ TROIS FLECHES


数ある部位の中で牛肉の王様と言えばサーロイン。
そして極上のサーロインのポテンシャルを余すところなく引き出す術として右に出るものがないのが炉窯でのステーキだろう。

その最高峰の1つは"あら皮"。
言わずと知れた高級店だが、サシに頼らない赤身の旨さを追求した純但馬血統の三田牛のサーロインを一口食べれば、クローズアップされがちなその値段が決してボッタクリではないことに気づくだろう。
もう1つの最高峰は"トロワフレーシュ"。
純但馬に限定せずにその時々で最高と思われるものを信頼している業者から仕入れているが、そのどれもが長期肥育された雌で名人と呼ぶに相応しい生産者が育てたものが多い。
また"トロワフレーシュ"では上記の黒毛和牛以外も赤身の旨みが凝縮した短角牛やその他の赤身の強い牛肉を取り揃えている。

短角牛サーロイン
黄味がかった脂からは飼料中の牧草、深みのある赤身から相当な月齢を想像したが、この日の短角牛は13歳(月齢150ヶ月以上)の経産の個体。
程よく噛み応えのある肉質で、飲み込む瞬間まで溢れ続ける肉汁からは深い味わいが広がる。
"トロワフレーシュ"で初めて短角牛を食べてからその旨さに開眼し、何度かの"トロワフレーシュ"と"トロワフレーシュ"以外でも短角牛を食べたが、その振り幅ののある個体差は短角牛の魅力の一つだろう。
自然交配による年間を通しての味わいの移り変わり、そして特に経産では圧倒的な月齢、これらによって食べるたびに違った顔を見せてくれる。
間違いなく旨い。
だが、初めて食べた短角牛の凄さが今でも頭と舌から離れない。
満足度 4


黒毛和牛サーロイン(ドライエイジング
10歳(月齢121ヶ月)の黒毛和牛の経産を近江のサカエヤさんでドライエイジングしたもの。
グル剥きにした状態で熟成特有の香りが強く自己主張をしている。
そして短角牛に負けず劣らない深みのある肉色。
グル剥きにした際に落とした表面は見事な白カビで覆われていて、その熟成技術の高さがうかがえる。
焼き上がったサーロインは生の状態とは一味違った香りを感じさせてくれ、今まで嗅いだどの熟成香よりも豊かで、その味わいもまた他に類を見ないレベルの旨さ。
正直今まで食べてきた熟成についてもう一度考えなくてはいけないと思ってしまった程。
満足度 5



黒毛和牛ヒレ
葡萄の搾りかすを飼料に配合しているという花巻黒ぶだう牛のヒレ
ヒレの塊を見たときはそれほど上物に見えなかったが、切り出されたヒレは見間違えと思うほど立派でオーラを放っている。
内部から湧き上がるような旨みと、どこまでも繊細な肉繊維が織り成す旨みの共演にしばし我を忘れる。
和牛の最高峰と感じずにはいられない。
満足度 5+



黒毛和牛サーロイン
インパクトがありながら嫌味のない脂と純度の高い旨みを兼ね備えたサーロイン。
結局これを食べてしまうと、黒毛和牛の本来のポテンシャルに何も敵わないことをまざまざと見せつけられてしまう。
最高の素材と調理の融合から生まれる唯一無二の完成度。
このサーロインを食べて黒毛和牛というものを知って欲しい。
満足度 5+