No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年11月18日 ヘレ専門店 きみや


最近の焼肉屋さんはお店ごとの個性が少ないところが多いように感じる。
有名店や繁盛店の人気メニューを単に模倣するのみで満足しているお店もあるのではないだろうか。
何度も訪れたくなるお店には個性が大事。
だが、この個性というのが非常に難しいのだろう。
そこで今回奈良で出会った強烈な個性を持ったお店を紹介したいと思う。
"きみや"は奈良県生駒市にあり、周りの環境は山々に囲まれお店では国道に面している。
失礼ながら、鹿、猪、猿でも出そうな田舎で、お世辞にも立地が良いとは言えない。
その立地や外観でいきなり驚かされるが、駐車場に車を止めて看板に目をやるとさらに驚かされる。
黒和牛?って何ぞや。。



店内では恰幅のいい、いかにも肉が好きそうな店主が笑顔で迎えてくれる。
店主はお客の入店を確認するとおもむろに厨房に入り、いきなり肉を切り出し始めた。

そして有無も言わさずテーブルに『あいつ』が運ばれてきた。
普通の焼肉屋さんではまず見かけることのない分厚いヒレ、というかシャトーブリアン、そしてこちらもどでかいタンの盛り合わせだ。
ヒレは1枚200g、1人につきそれが2枚やってくる。
つまり1人400gだ!
そしてタンも1切れ40〜50g位ありそうな大きさで、1人2切れ。。
お肉には赤い不思議なモミダレがからんでいるのだが、この正体は一切不明。
これはヒレでもタンでも一緒である。

ここで飲み物をオーダーし、最初から机の上に準備されていたキムチを摘みつつ、興奮している自分を落ち着かせた。
お肉はもちろん自分で焼くこともできるが、基本的には店主が焼いてくれる。
店主は巨大なヒレを摘み上げ、まず1枚熱々の網に乗せる。
しばし様子を見てから裏返し、頃合を見計らって取り出したのが2本のフォーク。
なんとそのフォークで肉の繊維にそってヒレを引き裂き始めたのである!
次々と1口台の大きさになっていくヒレを呆然と眺めていたが、爪楊枝でヒレを切る"ジャンボ"も似たようなものかもしれない。




そして店主は、焼けたヒレを特性のツケダレにつけて食べてみろと言う。
一般的な焼肉屋さんのツケダレ皿の数倍ある取り皿が"きみや"のツケダレ皿なのだが、その大きさだけでなく、ツケダレを舐めてみると山盛りにされたニンニクを除けば『エバ○』のタレか!?と思ってしまうのがまた衝撃と言える。

そして焼き上がったヒレはとにかく抜群の柔らかさ。
あの不思議な赤いモミダレは、それほど主張が強くなく、口の中では控えめな存在だ。
これであれば1人400gと言えども食べることができるのだろう。

タンは毎週金曜日が仕入れ日と言うこともあり、真ん中より先側だろうか。
こちらもとにかくボリュームが凄い。

それにしても衝撃的なお店だ。
メニューもないし、注文もとらない。
しかし、そんな不安を軽く吹き飛ばす喜びが待っている。
店主はお店に入ったお客を見て、食べそうか、あるいはあまり食べれなさそうか判断して微調整するようだが、1人400g超というのが不安な女性や少食な方は予約の段階でその旨を伝えることをオススメする。
逆に"きみや"は大人数で訪問すれば、信じられない量のヒレが盛られて登場するので、それだけでも非常に楽しそうだ。
また客単価が1万円を超えるような高級店でありながら、このような立地で約50年スタイルを変えずに営業し続けていることが本当に凄い。
とにかく驚きと謎だらけの名(迷?)店が奈良に存在する。