No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年11月19日 焼肉食堂 ジェット


関西の住宅事情に疎い私のイメージでは芦屋といえば超高級住宅街。
東京で言えば田園調布だ。
そんな芦屋にある焼肉屋さんであるが、阪急線線路脇のバラック小屋で、迷わずにお店に辿りつくには細心の注意が必要だろう。
店内は小奇麗でL字型のカウンターのみ。
緊張しながらお店に入った私をすぐにリラックスさせてくれる店主の人柄にはすぐに引き込まれた。
メニューはお任せのみで、飲み物のオーダーを取るとすぐにコースが始まるが、お肉は全て店主が焼いてくれる。
まずはセンマイやタンといった刺身から始まる。
鮮度の良さがストレートに伝わって素材で、これからのコースへの期待が一気に高まる。


タンはタン元を厚切り、タン中を薄切りといった具合に2種類。
厚切りは格子状に包丁が入れてあり、サクサクした食感がより強調される。
薄切りは焼き上がった後に有馬山椒を乗せ、ピリッとしたアクセントも楽しめる。



普段、脂の強いさから避けがちな中落ちカルビだが、しっかりと焼き切り、トロロ出汁と一緒に食べるとまろやかで旨みの強い最高の部位になる。
脂の強さや厚さなど、トロロ出汁との相性は研究し尽くされたものだ。



ホルモンに移行しても、テッチャンは柚子胡椒、アカセンは西京漬けといった具合に味付けのバラエティーが非常に豊富で、そのどれもが驚くほど旨い。





箸休めは噂のガスパチョ

ツラミは適度な歯応えと黒胡椒のアクセントが堪らない。



自家製のスモークレバーとスモークチーズまである。
このスモークチーズの可愛らしさは・・・。

一息入れるかのように、自家製スモークの次はテッチャンのトマト煮込み。
絶妙な煮込み具合故に実現する見事な歯切れ。
そしてトマトの甘みのと相性も抜群。

やっとタレへ移行するのだが、最初は顎筋。
香ばしさと旨みが滲み出てくる食感で、箸の勢いが衰えることを知らない。


そしてイチボの焼きしゃぶ。
葱をくるりと巻いて焼きにグラデーションを付け、最後に温泉卵にダイブさせて食べる。


本来であればこの後〆になるのだが、今回は店主オススメのカイノミを追加オーダー。
分厚いブロックをしっかりと焼き切り、重さをあまり感じさせない焼き上がり。
嬉しいことに半分は塩で、もう半分はタレで食べさせてくれた。





〆は時雨煮の出汁茶漬け、酢橘の冷麺、カレーライス、牛丼、卵かけご飯から選べるが、今回は卵かけご飯以外の全てをオーダー。
時雨煮の出汁茶漬けはどんなお腹がいっぱいでもスルスルと胃に収まってしまうような軽さで旨い。

酢橘の冷麺は冷麺というより素麺で、その香り豊かな出汁で喉の脂を全て洗い流してくれる。

カレーライスは牛肉が山盛りで香辛料も程よい旨み。

牛丼にはまたお肉が焼かれるのが嬉しいところ。


最後のカイノミを除いたこの至高のコースがなんと3,800円といういのがまず信じられない。
だが、最も驚かされたのは値段ではなく、そのコースの内容。
全ての味付けが違っていて、食感やアクセントまで綿密に計算し尽くされている。
ここまで完成度の高いコースにはそうそうお目にかかれないだろう。
焼肉食堂というにはあまりにかけ離れた内容で、この後神戸から自宅に戻るまでこのジェットのことが頭から離れなかったほどだ。