No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年2月6日 よろにく


通えば通うほどに和牛の奥深さに触れられる焼肉屋さんがある。
初めて"よろにく"を体験した時、アラカルトで食べて驚愕し、次はコースで骨抜きにされ、初めてお任せを知った日からその凄さにずっと心奪われている。
食べて食べて食べ尽くした肉好きを虜にする魅惑のお任せはスタートから毎回違った趣向が凝らしてある。
この日はハラミのローストから始まったが、山菜とウドのグリル、タラの芽とコゴミの天ぷらが付け合わせとなっている。
野菜の様々な食感や風味が、肉々しいハラミを上品でまろやかな印象に仕上げてくれている。


シビレは昆布の旨みをまとい焼かれている。
濃厚なシビレの味わいとポン酢との相性が抜群だ。

肉割烹を彷彿させる料理から一転、ヒレの塊が網に乗せられた。
ヒレの端っこの脂のより少ない部分の塊を丁寧に転がしながら、全体を包み込むようなイメージで焼き上げる。
ダイヤの原石を磨き上げるようなイメージとでも言えばいいのだろうか。
磨き上げにかける真摯な気持ちが肉に伝われば、その断面は見事なロゼ色に仕上がり、肉とはどうあるべきかと教えてくれる。




ユッケがなかなか食べれない不遇の時代では炙りメニューが多くの焼肉屋さんで見受けられる。
"よろにく"も生肉の許可を得ていないので生肉は食べれないが、炙りメニューのクオリティは他のどこよりも高い。
肩三角は事前にバーナーで炙られ、インパクトの強い旨みを味わえ、ヒレは目の前のロースターで炙り、卵黄と海苔と一緒に食べる。


タンやハラミ以外のホルモンにはあまり力を入れてないように見える"よろにく"だが、ハツに関しては専門店を凌ぐほどのハイクオリティ。
足の早いハツだが臭みなど皆無で、むっちりとした感触が前歯に心地よく伝わる。

定番のタンも根元の極上部位、しかも生の黒タンが味わえる。
薄切りは片面焼き、しかも生の面を外巻きにして食べると、女性の柔肌のような滑らかさに身をよじるだろう。

家庭料理で一般的な肉じゃがも"よろにく"ではここまで昇華されてしまう。
サーロインを1枚を贅沢に使うというだけじゃなく、じゃが芋の代わりが海老芋で風味と滑らかさが全く違う。
究極の肉じゃがと言っても過言ではないだろう。

肩三角は炙り以外に焼き物でも味わえるが、肉自体から放たれるコクや旨みは和牛を食べこんでいる人であればあるほど驚いていまうレベルではないだろうか。

ツチノコと呼ばれているのはヒレの一部でしっとりとした食感が特徴。

削ぎ切りにされたミノは胡麻油を全身にまとい、貝類と錯覚してしまう程のシャキシャキとした食感を奏でる。

牛の中でも最高級と言われるシャトーブリアンやサーロインも部位毎の良さを最も感じやすい厚さで提供される。
繊細でふっくらと旨みの花を咲かせるシャトーブリアン
こっくりと舌の上で存在感をアピールしながら、スーとした引き際を見せるのがシルクロースというメニュー名のサーロイン。


焼肉屋さんで一般的なミスジはタレか?塩か?
"よろにく"では風味豊かな出汁と一緒に食べることもできる。
ミスジの旨みと出汁が驚くほどお互いを引き立て合い、一気に出汁を飲み干してしまう。



出汁で口の中があっさりとしたところで登場したのがビフカツ。
関東ではあまり馴染みがないが、関西に行くとかなり一般的に食べられている料理だ。
今回はビフカツはビフカツでもヒレを使った贅沢なビフカツ。
焼いたものとは違った仕上がりは水分量の違いからだろうか。
揚げたことによる旨みの凝縮感だけでなく、衣がより一層ヒレの味わいを引き立てる。


ヒレカツのおまけにハツカツも。


〆はコプチャンをたっぷり使った柳川鍋
コプチャンが旨いのはもちろんだが、出汁が存分に効いたスープはあっという間に飲み干されてしまう。


こんなコースを食べてしまったら、次はどんな焼肉屋さんへ行けばいいのだろうか。
そんな悩みさえ起きるのがお任せの凄さだろう。