No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年2月18日 生粋


六本木に東京ミッドタウンが開業し、ブーメランパンツをはいた某芸人さんの『そんなの関係ねぇ』が流行語となり、ドラマ『ビューティフルライフ』の視聴率が40%を超えた2007年。
それらを吹き飛ばすようなセンセーショナルな出来事が焼肉界では起きていた。
突如として青山・骨董通りに現れた"よろにく"の存在がそれだ。
オーナーのVANNEさんは、焼肉好きが高じて遂には焼肉屋さんを始めたが、それまでは焼肉屋さんとは全く無縁のDJとして活動してきた方。
人並み外れた研究熱心さはもちろんだが、最も驚かされるのはクリエイティブなセンス。
瞬く間に都内を中心とした焼肉好きの心を鷲掴み、焼肉界のスターダムにのし上がった。
2010年には赤坂のみすじ通りに、カルビを置かない赤身専門の焼肉屋さんとして"赤坂みすじ"もオープンさせ、ハイクオリティな肉質でありながら"よろにく"よりも若干安い価格帯で焼肉好きを狂喜乱舞させた。
そして2014年。
末広町の駅出口の目の前、秋葉原から歩いても10分程度の場所に、遂に"生粋(なまいき)"をオープン。
"生粋"では厚生労働省の生肉基準をクリアしており、牛刺し、生肉の握りやユッケを合法的に食べることができる。
プレオープンでうかがったこの日もチマキは刺身で、ユッケは納豆ユッケ、ホワイトユッケ、ぶつ切りユッケといった3種類がいきなり前菜で登場。


基本的にアラカルトメインのようだが、お願いしてコース仕立てにしてもらった中にはトモサンカクの握りや平ユッケも登場し、久しぶりに食べる生肉達に、思わず小躍りしたくなる。


だが、生肉はそれだけではない。
"よろにく"の定番となっているシルクロース。
"生粋"では『生シルクロース』として、シルクロースを生肉として食べることができる。

店名にもかけているように生肉が食べれるのが"生粋"のウリだが、"よろにく"のVANNEがやるからにはそれだけのわけがなく、随所に粋な計らいが盛り込まれている。
極上のタン元の薄切りは、最初は片面焼きで滑らかな食感を楽しみ、2枚目はフィンガーライムのプチプチとした食感と一緒に口の中でタンが踊る。


ミスジ大根おろしの入った出汁と一緒に食べると、出汁の優しい旨みがミスジを包んでくれる。


もちろん焼肉屋さんらしく、定番の焼肉にも抜かりがない。
シンシン、ハラミ、ミノ、シャトーブリアンといった部位を食べたが、この日のシンシンは特に際立った旨さで魅了してくれた。




終盤にはすき焼きも。
絶妙な塩梅の割下でサーロインの食感や甘みといった良さがさらに引き立ち、これだけでも勝負できるレベルもある。



〆は驚愕のヒレカツ丼。
しかもサーロインのエキスがいっぱいのすき焼きで使用した割下を出汁に使ってという物。
これはもはや自分が知っている食べ物の範疇を超えた食べ物。
ご飯の上には牛の全ての旨みが乗っかっているようだ。




全国にいる生肉に飢えた人はぜひ"生粋"の暖簾をくぐってみて欲しい。
ただの生肉ではなく、生肉好きを喜ばせる本当に旨い生肉がそこにあるから。