No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年4月23日 芳味

肥育されている牛の健康状態はどこに出てくるのか。
一番分かりやすく出やすいのは内臓だろう。
それは人間と一緒だ。
現在の牛肉市場、特に黒毛和牛に関してはサシの状態が価格に影響してくる場合がほとんどのため、サシを入れるためにビタミンAの摂取量をコントロールされる牛が多く、中には屠場に到着する頃にはフラフラ歩くのが精一杯の牛もいると聞いたことがある。。
サシを入れるためには限界ぎりぎりまで肥育された牛の内臓、特にレバ等は健康とは言えない状態のものもあり、そういった牛の内臓は残念ながら廃棄されてしまう。
この現状から考えるのが、健康状態が抜群の内臓はどんな味がするんだろうかということ。
健康状態が抜群の個体はどれだ?
仮に個体が分かったとしても個体識別番号管理がされていない。
この問題を解決するのは我々一般人には非常に困難というか不可能だと思われた。
だが、それを解決してくれたのが群馬の牛飼い名人・増田さんだ。
ビタミンAコントロールをしない増田さんの内臓を専門に扱うモツ鍋屋さんがあると言いお店を案内してくれた。
本職はマッサージ師とおっしゃる店主が趣味でやっていると言い放つお店の名前は"芳味"。
戸越銀座から程近くにお店を構えている。
その内臓をまずは酢モツで味わう。
こんもり脂の乗ったコプチャンはまろやかな甘みがあるのだが、その甘みの引き際もすっきり。
山芋との食感のコントラストもいい。

そしてモツ鍋。
ニンニクがたっぷりのスープと違ってコプチャンの滋味深い出汁が感じられる優しいスープで、一口目は少しだけ薄く感じるのだが、食べ進めるうちに絶妙な濃さに変化していく。
たっぷりと入っているコプチャンの旨さも格別。


コプチャンだけでなく、レバを含めた他のホルモンを何としても食べたくなってしまった。
いまだに正肉の記憶が頭と舌に残っているほどの増田牛だが、内臓まで他と一線を画すレベルとはどういうことなのか。