No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年12月25日 都内某ステーキ店


前日に”銀座吉澤”で食べた特産松阪牛
まさに『Authentic Beef』と呼ぶに相応しかった。
兵庫県産純但馬血統の子牛を松阪で3年以上肥育した個体の月齢は47か月。
一般的な黒毛和牛の月齢が28か月程度ということを考えれば、如何に凄いかが分かる。
こんな個体が市場に出てくるのは、品評会や需要の増加によって年に1回、12月のこの時期だけ。

この肉で『第2回神戸ビーフ・但馬牛勉強会』を開催しない理由を私は持っていない。
前日、すき焼きで食べた個体を今度は炉窯ステーキで味わうのだ。
この『Authentic Beef』を焼いてくれるのは前回勉強会と同じ菅井さん。
“あら皮”からキャリアをスタートさせ、都内の炉窯ステーキ店で腕を磨き、炉窯焼き歴は20年。
『Authentic Beef』を焼くに最も相応しい炉窯の焼き手だ。

ヒレは真ん中のシャトーブリアンだが、但馬牛の特徴を色濃く残していて、普段見慣れているヒレのフィレミニヨンかと思うほどとにかく判が小さい。
しかし、その身は繊維質がぎゅっと詰まり、長い年月をかけて醸成された旨みを蓄えている。
歯を立てれば、わずかな抵抗と共にその旨みを肉汁に乗せて解放し、得も言われぬ高揚感をもたらす。










そしてサーロイン。
上質な肉ほど差が出るのがサーロインだが、やはりこの個体は違う。
圧倒的に違う。
テーブルを囲み、肉を頬張るメンバーが一同に口にするのがそのゼリーのような食感。
肌理の細やかな肉繊維は滑らかで、その肉繊維に挟まれているサシもつるりとして軽い。
肉を旨みを煮詰めて凝縮させた煮凝りと言ってもいいかもしれない。
噛むほどに溢れる純度の高い旨みは、神戸の”あら皮”の自分史上最高のサーロインを思い出させる。








おまけにするには贅沢すぎるが、鳥取の田村牛(雌、33ヵ月)のランプも純但馬牛ではないが、あまりに旨そうだったので持ち込んだのだが、その濃い肉色を裏切らない味の濃さ。
本当に贅沢すぎる。





自分自身が食べてみたい肉を、高い志を持った料理人の方々に焼いてもらう。
そして一緒に食べて意見交換をする。
純但馬牛と炉窯。
引き続きこの組み合わせで第3回勉強会を計画せねば。

(参考)Yakipedia by BMS12
○特産松阪牛
兵庫県産但馬牛を素牛とし、子牛を導入後900日以上の肥育が求められる松阪牛
かつて松阪牛が日本一のブランド牛と認知されていた時代は、素牛は全て兵庫県産但馬牛であったが、現在の松阪牛の中で特産松阪牛の占める割合は5%位しかないようだ。
もちろん雌のみ。
兵庫県で約8か月、松阪で約30か月(900日)なので、出荷される特産松阪牛場月齢38ヶ月というのは一般的な28ヶ月と比べれば、差は一目瞭然。
さらに今回の47か月の凄さも分かるはず。
ちなみにデパートなどで見かける松阪牛シールには『A5』や『A4』といった等級が記載されているが、特産松阪牛は『特産』と記載されているのみ。
特産松阪牛の基準を満たすような個体なら、等級など関係ないという自信の表れだろう。