No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年1月13日 トロワフレーシュ TROIS FLECHES


ビフカツ。
関東ではあまり馴染みがないが、関西では一般的な牛肉料理だ。
特にヒレを贅沢に使ったヒレカツは、揚げることで適度に水分が抜かれ、旨みが凝縮し、柔らかなヒレとさくりと揚がった衣のマリアージュが関西人の心を鷲掴みにしているのかもしれない。
私もビフカツに魅せられてしまった1人で、最高のビフカツを追い求めている。
そして出会ってしまった。
とんでもないビフカツに。
肉は岩手県奥州の佐々木譲さんのヒレ
一噛みしただけでいきなり口いっぱいに広がる旨みは、生命の躍動感すら感じさせ、飲み込む瞬間には余韻が鼻を抜ける。
肉そのもののポテンシャルが圧倒的に高い。
衣のパン粉は極めて細かい。
そのパン粉がしっかりと揚がり、肉との一体感は強い。
炉窯での火入れを極めた橋山さんは、ビフツの火入れも抜かりがない。
油の中を軽く泳がせ、余熱で火が入れられる。
これ以上でもこれ未満でもない完璧な仕上がり。
自分の持っている『旨いビフカツ』のイメージを頭一つ抜く衝撃的な出会いだ。


きっかけは蝦夷鹿のカツ。
滅多に食べない鹿肉の旨さに驚きつつ、カツの火入れ、肉と衣の一体感があまりに素晴らしかった。
この蝦夷鹿を食べ終わる頃には、頭の中は『ヒレカツを食べたい』という欲求でいっぱいだったw

もちろんステーキもたらふく食べている。
佐々木譲さんの奥州牛シャトーブリアン、青森の倉石牛サーロイン、そして滋賀の”サカエヤ”でドライエイジングされた近江牛サーロイン。



蝦夷鹿のカツと一緒に『ヒレカツを食べたい』欲求を爆発させたのは、佐々木譲さんのこのシャトーブリアン
ジューシーで旨みが膨らむタイプではなく、力強い旨みがダイレクトに突き刺さる感じに脳が揺さぶられる。




“SUPUL”で名前を見かける倉石牛を他のお店で食べるのは初めてかもしれない。
見た目よりも脂があっさりとしていて、その分赤身に力がある。



何度も食べている”サカエヤ”のドライエイジングだが、この日は30か月の雌の近江牛
今までは経産ばかりで未経産は初めて。
焼かれる前の状態で机の上に置いてもらったが、そこから放たれる熟成香はとにかく強烈。
ところが丁寧に周りの脂を掃除され焼かれた肉は、過度な熟成香が一切感じられず実に食べやすい。




ステーキだけでも都内最高峰の”トロワフレーシュ”で、ヒレカツというキラーアイテムを追加した夜。
銀座でこの奇跡を知ってる者はまだ少ない(はず)。