No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年1月27日 焼肉 しみず

そう遠くない日にこの”しみず”は焼肉業界でとんでもない存在になる。
そんなことを確信した夜。
この日、清水さんが仕入れていたのは兵庫県の名門・川岸牧場の神戸ビーフ
久しぶりの神戸ビーフの入荷だが、今までの入荷の中でもトップクラスの肉質だ。
丹精込めて肥育された牛に宿る肉本来の甘みと濃厚な旨み。
上質なバターを凌ぐ滑らかさと軽さを兼ね備えたサシ。
火を入れることで立ち込める香りは胃袋を刺激し、夢の世界へいざなう。

トウガラシやクリといった赤身の強い部位は、赤身好きという人ほど驚くだろう。
サシが少ない分、肉の味がダイレクトに感じやすいが、大事なのはその質。
そんなことを教えてくれる純度の高い旨みを感じる。


霜降りの部位も負けていない。
ザブトンやミスジはふんわりと軽い口当たりで、甘みの広がりが早くて上品。
脂の質の良さにただただ頷くことしかできない。


赤身とサシのバランスが良く、肉そのものの質が分かるのが肩ロース(芯)。
とにかく圧倒的に違う。
普段食べている肉と違う。
血統、月齢、飼料、そしてストレスを軽減する肥育技術だろうか。
甘みと旨みが口の中で絡まり合い、夢心地を味わえる。

店主・清水さんが心血注いで仕入れているのは正肉だけではない。
何度も内臓業者に足を運び築き上げた信頼関係があってこそ仕入れられる内臓類も必食。
私の知る限り東京一分厚いタン元(神奈川の”炭焼喰人”と双璧)は、ムッチリとした食感で驚くほどの歯切れの良さ。
そして香り高く、雑味のない透明度のある旨みを味わえる。

横隔膜は必ずハラミとサガリの両方を食べ比べるべき。
その上質さ故、味付けに頼らない肉々しい旨みが溢れ、それぞれの噛み応えや肉汁の旨みの違いを体感することができる。


シマチョウやテール、青唐辛子の味付けのミノも私が必ずオーダーするメニューだが、いつ食べてもハズレはない。



一通り食べた後は、奇跡の神戸ビーフをリピートせずにはいられない。
ウワミスジは若干厚切りが断然おすすめ。
赤身に歯が入り込む程にまろやかで主張の強い旨みが溢れ出してくる。

エンピツは適度なサシが入っているが、プリッとした適度な弾力があり、肉の甘みを長く味わえる。


以前はタレが若干濃いと感じる時期があったが、肉質を活かすタレを研究し続けている結果だろうか、タレにまろやかさが加わり、より肉の味が浮き出るタレに変わってきている。
仕入れだけでなく全てが進化し続ける名店。
通わずにはいられない。