No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年3月4日 くいしんぼー山中


滋賀県の福永さんが肥育する近江牛
牛肉に携わる全ての人に1度は必ず食べて欲しい牛肉だ。
いや1度は食べるべき牛肉だ。
兵庫県産純但馬血統の子牛の中でも、特に蔓がしっかりと守られた但馬牛の聖地・美方郡の子牛を中心にしている。
サシを入れるためのビタミンコントロールは一切行わず、月齢38ヶ月程度まで肥育された牛肉は、艶のある小豆色で、他に類をみない深い味わいを秘めている。
そんな福永さんの牛は、目が行き届く範囲だけ1頭1頭手塩にかけて肥育される為、出荷される頭数は少なく、その上セリにかけられることがなく、”くいしんぼー山中”と福永さんの営む精肉店で分けられる。
長年”くしんぼー山中”が買い支え続けてきたからこそ、福永さんは拘り続けることができたのであろうし、そこに絶対的な信頼が生れている。

“くいしんぼー山中”の特等席はカウンター。
今まで見てきたどんな牛肉とも違う福永さんの牛肉は圧巻。
それを仕込む店主・山中さんの手元を見ながら、独自の牛肉論【山中語録】をうかがうことで至高の時間を過ごすことが出来る。
ちなみに山中さんはこの日の我々の予約に合わせて牛肉の在庫を調整し、この日の為に2日前に最高の牛を福永さんに屠畜してもらい、定休日である前日に取りに行ってくれている。
ここまでしてもらえるとは、肉好き冥利に尽きる。

ランジリ炙り
『刺身で食うには、このランジリが最高なんや』(山中語録)

生食は禁止されている為に炙って食べるが(写真は炙る前)、山中さんの言葉通り一噛みしただけでふわーと広がるフレッシュな香りと甘み。
赤身の肉片に驚くほど凝縮された味わいに頬が緩んで仕方ない。
満足度 5+




フィレミニヨン炙り
『肉は鮮度が命。新鮮なら新鮮な程旨い。特にヒレは絶対に鮮度。』(山中語録)

ランジリ同様、驚かされるのはそのフレッシュな瑞々しさ。
そしてサシの上品な甘みは極上のバター。
一口で瞳孔が開きっぱなしになってしまう衝撃。
満足度 5+


コンソメスープ
『コツはとにかくええ肉をたっぷり使うこと。マルキはんの肉だからこその味や。』(山中語録)

冷製のコンソメスープだが、その味わいは牛肉そのもの。
牛肉の旨みのエキスをそのまま取り出し、より凝縮させただけ。
スプーンですくった中に"かわむら"と双璧のコンソメの最高峰がある。
満足度 5

ロースステーキ
『ほんまに旨い牛肉は照りと粘りや。』(山中語録)

昔から上質な牛肉を表現する言葉として「小豆色」が使われてたが、これほど小豆色をした牛肉は見たことがない。
選び抜かれた美方郡の但馬牛に良質な資料をたっぷりとあげ、じっくりと3年以上飼い込んだ個体。
そして一切ビタミンコントロールをしないナチュラルの粋を極めた牛肉だけが持つ肉色だ。
ぷりっと弾力に富んだ肉片に歯を入れると、適度な食感と共に今まで感じたことのないレベルの旨みが舌が覆われる。
今まで食べてきたどんな牛肉とも違う、ここでしか味わえない頂点のステーキ。
満足度 5++







ヒレカツ
『大事なのは部位やない。牛そのものや。』(山中語録)

サシなどほぼ全く入っていないヒレだが、そのどこまでも深い肉色に秘められた味わいもまた深い。
塩で食べれば肉本来の旨みが弾け、特製デミソースで食べればソースの酸味がより肉の甘みを引き立てる。
体中の神経を奥歯周辺に集めて、ヒレカツの旨さだけに酔いしれたい。
満足度 5++



ハンバーグ
私が日本一旨いと思うハンバーグ。
これ以上ない福永さんの牛肉がふんわりトロトロに仕上げられたハンバーグで、真ん中に落とされた卵とも奇跡の相性。
満足度 5


ビーフカレー
福永さんの牛肉がたっぷり入ったビーフカレーは、香辛料の香りが心地よい。
カレーに入っても、肉の味がしっかりと主張する規格外の牛肉。
満足度 4

上記の山中語録以外にも、熟成や牛の肥育についての熱い話は多数ある。
カウンターで陣取り、時間の許す限り山中さんのお話に耳を傾ける。
これ以上の時間を過ごせる場所などこの世にないだろう。