No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年3月11日 焼肉 かねこ


毎月毎月どんどんオープンする都内の焼肉店
肉好きにとっては嬉しい限り。
だが、手放しで喜んでいるだけではない。
中には「肉を切って出せばいい」といった感じで、焼肉屋さんのハードルが低いと勘違いしてしまっているお店も散見される。
こういった気持ちで始めること自体、もちろん否定しているのではない。
素材選びから、カット、味付けの奥深さ、時間と共に感じるそれらを向き合い、「名店」への階段を一歩一歩登っていってもらえれば嬉しい。
今回訪れたのは、これらとは対極のニューフェイス
浜松町の名店”くにもと”の本店で5年、新館で3年修行を積んだ本物の職人である店主・金子さん。
私の知っている中で”くにもと”から独立したお店は2つあるが、どちらも九州ということで、東京での独立は初めてのことだろう。
これは、肉好きとしてはとんでもないニュースだ。
私は新館店主のブログが好きで月に一度程度の更新を楽しみにしているのだが、そこから感じられるのは焼肉に対する「気迫」。
修行時代の苦労、そして現在のや拘りや焼肉に対する想い。
その「気迫」を肌で感じながら8年修行を積んだ本物の職人のお店である。

2015年3月2日にオープンした“かねこ”は代官山の路地裏にひっそりとたたずんでいる。
何も知らなければ焼肉店だと気付く人もいないほどオシャレな外観。
店内はテーブルが4つしかないが、オープンキッチンは広々としており、金子さんは気持ち良さそうに肉に向き合っている。
お店は奥さんと2人でやっているようだが、奥さんも”くにもと”で修行していたというのが驚きだ。
“かねこ”では”くにもと”に似ていて、肉については「おまかせ盛り」を食べてから、足りなければ自由に追加オーダーをする仕組みとなっている。
kanekoのローストビーフ
おまかせ盛りの前に前菜としてオーダー。
しっとりとした食感に加えて、タレも甘みもちょうどいい。
噛み締めるごとに肉の味は出てくる。
満足度 4

ハラミ(おまかせ盛り)
分厚いカットに火入れを意識した隠し包丁。
肉汁はあるが、ハラミらしい肉の味は少々乏しい。
オープンしたばかりで本来の回転になるまで、ホルモン類にバラつきがでるのは仕方のないこと。
満足度 3

ミスジ(おまかせ盛り)
ハラミとミスジは塩の味付け。
仙台牛のミスジで細かなサシが入っている。
満足度 3

シンシン(おまかせ盛り)
遂にここからタレエリア。
但馬牛のシンシンは適度な噛み応えと肉の味、何よりタレとの相性は異常。
満足度 4

イチボ(おまかせ盛り)
イチボはなんと田村牛。
肉の味の濃さは盛り合わせの中でもダントツ。
それを更に昇華させるタレとの相性も完璧すぎる。
問答無用でお代わりしてしまった。
満足度 5

(お代わり)

トモバラ(おまかせ盛り)
最近あまり食べなくなったバラだが、赤身が強くサシは少なめのトモバラ。
生産者は近江の岡崎さん。
肉に歯が食い込むと、どんどん口の中いっぱいに旨みが広がる。
昔ながらの王道を感じると共に、極上の素材を引き立てるカットから味付けを含めたスキルの高さに驚かされる。
満足度 5

サーロイン(おまかせ盛り)
サーロインも近江牛だが、生産者は岡崎さんではなかった。
肉の味はもう一歩だが、サシは甘みが強く、舌の上で蕩け、タレとのマリアージュが最高。
満足度 4

切り落とし
オープン間もないこともあり、おまかせ盛りで食べた部位の端っこだけで構成された贅沢な切り落とし。
食べやすさを計算されたカットに、やはり極上のタレが絡んで素晴らしい世界をみせてくれる。
満足度 4

部位によるバラつきはわずかにあるが、これはオープン間もないことによるので、時期に解消されるだろう。
とにかく感じるのは、”くにもと”で修行を積んだ職人さんのレベルの高さ。
圧倒的な技術力を持っている。
今回食べたような田村牛や岡崎さんの牛のように、長期肥育された雌牛のラインナップが増えるにつれ、都内で絶対的な存在になることは間違いないだろう。