2015年6月 満月

何年か前に雑誌「Dancyu」でその存在を知ってからずっと気になっていたお店。
今回は店主・徳山さんの従姉妹の方にアテンドしてもらうという奇跡の会に参加させていただいた。
身内用のスペシャルお任せコースはとにかく想像を超えるものであった。
前菜のキムチやナムルの盛り合わせに始まり、肉の前菜も大皿に盛られてくる。
炙ったウワミスジでマンゴーを巻いたものは、肉の甘みとマンゴーの甘みのマリアージュが素晴らしい。
他にも炙られたタンやウワミスジは握り、湯通しされたミノやセンマイ、ハツも秀逸。
この肉の前菜だけでも”満月”を訪れる価値は十分にある。
それほど感動的な盛り合わせだ。

続いて塩系の盛り合わせ。
徳山さん自ら焼いてくれるのは“満月”名物のテッチャン。
関東でいうシマチョウだ。
内臓業者に任せず、自ら下処理を行うテッチャンには、適度に脂が残されている。
脂はしっかりと火を通され、甘みが強くすっきりとしたキレがあり、皮も心地よい歯切れが印象的。


テッチャンと同じ位衝撃を受けたのがイチボ。
正直に言うと、”満月”はホルモンがウリのお店で正肉はそれほど期待できない、と勝手に思い込んでいた。
ところがイチボを食べて、その思い込みが一気に吹き飛んだ。
一噛み毎に歯茎を伝わって広がる旨みは強く、適度に入ったサシの甘みを感じさせる。
聞けば但馬牛を中心に雌牛のみを仕入れているそうだ。
雌牛絶対論者ではないが、食べればやはり納得せざるを得ない旨さ。


タンは根元の部分を贅沢な厚切りで。
ムッチリとした食感で、脂に頼らないタン本来の旨みが活きている。


タン以上に分厚いのが巻き。
サシがしっかり入った上に、これほどの分厚さがあるのだが、脂の重さを感じさせないには驚かされる。



ハツやハツモトも鮮度の良さを感じさせる甘みと食感。


お待ちかねのタレ系の盛り合わせはハラミ、ミノ、タケノコ、アカセン、ハチノス。
今回仕入れたハラミは相当良かったということで、ハラミだけ2人前という有難い対応。
その言葉に偽りはなく、前歯が肉繊維に食い込ませ千切ると、野性味溢れる肉汁が止めどなく広がる。
奥歯を押し返す弾力も、嫌な硬さではなく、鮮度の高さ故のものだ。


初めて食べたのがヤン付のハチノス。
こちらでは普通なのだろうか、徳山さんも何もおっしゃってなかったのだが、気付いた時には初めての感動があったw
一度茹でられているため、ヤン特有の食感はなかったが、それでもセンマイ部分とは違った食感で、1切れで2度旨いハチノスだ。


それ以外にもミノ、タケノコ、アカセンは食感が良く、フルーティーな甘みのタレとの相性が抜群で最高に旨い。



素材の質、味付けを工夫、共に素晴らしい名店だ。
初めての訪問でお任せの最高峰を食べれた幸運に感謝。