No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年6月8日 にくの匠 三芳

初めて”三芳”で伊藤さんの肉料理を食べた時の衝撃は今でも覚えている。
既存の概念に捕らわれず、クリエイティブな発想で今までにない肉料理に溢れていた。
しかし、同時に感じたのが、肉についてはまだ改善の余地があること。
ところが、伊藤さんの探求心は止まることを知らず、あれよあれよという間に但馬牛を中心に最高の牛肉が揃うようになっていた。
特に最近は、川岸さんの但馬牛を使った伊藤さんの肉料理が食べれる。
そして、この日は更なるスペシャルが用意されていた。
芝浦の市場は毎日セリが行われているが、神戸の市場毎日ではなく、金曜日に屠畜したものを翌週の月曜日にセリとなる。
そしてこの日は当日競り落とした、つまり屠畜3日後の川岸さんの但馬牛が用意されていた。
神戸の市場でセリのあった日に、その肉を食べることがどれほど大変か。
今までこんな肉を食べたことがある人がどの位いるだろうか。
肉をセリ落とし、カットし、運んでくれた川岸さんへは感謝しきれない。
こうしてめくるめく伊藤さんのスペシャルな肉料理が始まった。
お肉のお出汁
ジュンサイが浮いたお出汁は滋味深く、胃袋と心を温めてくれる。
満足度 4

タンの昆布締め
ねっとりとしたタンは適度に水分が抜け旨みが凝縮し、逆に昆布の旨みを吸っている。
香りが立つ絶妙な温度がより完成度を高めている。
満足度 5

タン刺し
業者さんとの信頼関係が成せる扱いなのだろうか、当日朝に屠畜した個体のタンを初めて食べた。
ザクッとした生命力溢れる食感に、信じられないほどすっきりとした脂の甘みが広がる。
満足度 5+





ヒレの端っこ
この日の午前中にセリ落とされた川岸さんの神戸ビーフヒレの端っこでテート側。
ヒレ特有の肉繊維は感じにくいが、柔らかですっきりと力強い旨みがある。
満足度 5


フィレミニオン
口の中で一瞬で消えてなくなるサシに酸味と甘みがバランスよく放たれる。
柔らかいが、噛むほどに肉の味が舌の上で踊る。
満足度 5+



サーロイン
強火でさっと炙られたサーロインもこの日競り落とされた川岸さんの神戸ビーフ
サシの入ったサーロインだが、やはり大事なのは脂質だと実感。
成熟しきった個体は寝かさなくても肉の力があり、舌を覆い尽くすような旨みと、すっと消える軽さのサシがある。
満足度 5


サーロインの旨煮
サーロインを煮るという暴挙!?
いや暴挙ではない。
出汁の旨みと相まって、旨みの協奏曲が奏でられる。
満足度 4

テート握り
溶けるわけではないが、繊細で柔らかな食感。
雑味がなく純度の高い旨みは鮮度の賜物なのだろうか!?
満足度 5


ガリ握り
当日朝に屠畜した個体のサガリ
プリプリで今まで食べてきたサガリとは全く別物の食感と味の濃さ。
満足度 5




フィレミニオン握り
テートよりもシャリと絡まりやすく、甘みに一層強い。
満足度 5


剣先イカとサーロイン握り
意外な組み合わせなのだが、噛むとサーロインとイカの相性の良さに驚く。
キャビアの塩気がまた絶妙。
満足度 5

テールの味噌漬け
味噌の濃厚な味わいに負けないのはテール位だろうか!?
香ばしさがより食欲をそそる。
満足度 4

シャトーブリアンの低温調理
じっくりと低温で火入れされたシャトーブリアンは綺麗な断面で、ぷるんぷるんのゼリーのような奇跡の食感。
贅沢に盛られた大振りの雲丹がまた旨い。
満足度 5




ガリ
プリプリのサガリは火を入れることで、より弾力を増し、野性味を感じさせる。
飲み込むのが勿体なく感じるほどの旨さ。
満足度 5

リブロースのしゃぶしゃぶ
川岸さんのリブロースだが、この日競り落とした個体ではなく、少し寝かしたもの。
肉繊維のほどけ具合と香りが強く、繊細な旨みのしゃぶしゃぶ。
満足度 5



サーロインのしゃぶしゃぶ
サーロインはこの日競り落としたフレッシュな個体。
リブロースよりも若干厚めにカットされており、肉本来の旨みが強烈に味わえる。
この辺りの微調整が伊藤さんのセンスだろう。
満足度 5+


シャトーブリアンのステーキ
繊細さは残しながら、弾力を兼ね備えたシャトーブリアン
"かわむら"のようなふんわりとしたシャトーブリアンとは別物だが、肉本来の味という観点からは最高。
満足度 5+






サーロインのステーキ
サシが入っているが、ここまで重たさを感じさせないサーロインとは驚かざるを得ない。
何切れでも食べたくなる秘密は赤身の味わいと脂の軽さ。
満足度 5




進化し続ける伊藤さんの技術に、セリ落としたばかりの神戸ビーフ、この日屠畜したタンやサガリといった極上の素材。
牛肉料理の最高峰と言っても過言ではない。
"三芳"がどこまで行ってしまうのか。
とにかく目を離したら置いて行かれてしまう凄みがある。