No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年7月1日 三田牛竈炭火焼 ウェスタ Vesta


かつて炉窯と言えば”あら皮”の専売特許みたいなものだったが、”ドンナチュール”のオープンを皮切りに、炉窯を搭載したステーキ屋さんがどんどん増えてきた。
炉窯のステーキ屋さんと言っても、焼き手によって焼き方が違ったり、炉窯自体の癖による違い、また扱う肉の方向性が全然違ったりして、お店が増えても食べる側には楽しみが増える一方だ。
三田牛に拘った炉窯ステーキの絶対王者”あら皮”
“あら皮”の姉妹店” 哥利歐”
“あら皮”から独立した”ドンナチュール”
“ドンナチュール”から独立し、三田牛に縛られず、その時々で全国の長期肥育の雌牛を手頃な価格で提供してくれる”トロワフレーシュ”
“トロワフレーシュ”から独立し、神戸ビーフ・但馬牛に拘り、熟練の炉窯焼き名手がいる”イデア
“哥利歐”から独立し、黒毛和牛以外も扱い、炉窯ステーキの普及に努める”ヴィティス”
そして、今回“哥利歐”のスタッフ数名が新天地としてオープンさせた”ウェスタ
ウェスタ”で扱う肉は”あわ皮”と同じように三田牛の中でも生産者を絞ったもの。
今回の個体は勢戸さんグループの西沢さんの純但馬血統三田牛34ヵ月の雌。
個体識別番号1339065289、血統は千代藤土井-福芳土井-照長土井。
部位はヒレ、サーロイン、イチボにランプというラインナップ。
全て食べてみたかったが、炉窯のステーキにはある程度のある程度の厚さが必要なこと、2名での訪問ということから、悩みに悩んでシャトーブリアン300g、サーロイン250g(500gの厚さのサーロインを半分に割ってもらう)、ランプを200gオーダー。
“あら皮”での鉄板メニュー・スモークサーモンのしっとりとした肉質と芳醇な香りにうっとりしながらステーキが焼き上がるのを待つ。
待ちに待ったステーキは期待を膨らませるのに十分な香りを漂わせ登場した。


ランプ
かなりの分厚さのランプ。
ナイフを入れるとスーと歯が入り、奥歯で噛み締めれば、その詰まった肉繊維自体が繊細で柔らかい事に気付く。
何より驚かされるのは純度の高い旨みの質。
雑味が一切なく、肉の旨みだけが波状に響いてくる。
ただ、この分厚さに対しての焼きはもう少しじっくりと火を入れた方が良かったように感じる。
それが唯一残念。
満足度 4



シャトーブリアン
一般的にヒレの旨みはランプに負けるものだが、このシャトーブリアンの旨みはランプに全くヒケを取らない。
そして信じられないほど繊細な肉繊維は極上の食感を生み出す。
舌で押し込むだけで形を変える肉片は、香りと旨みを溶かしながら口の中に広げてくれる。
今年No.1シャトーブリアンの最有力候補。
満足度 5+







サーロイン
ナイフでカットし肉片を口に運べば、それはゼリーに化ける。
トロリとした食感は脂ではなく、赤身の繊維。
そしてサシは赤身を引き立てる脇役に徹している。
舌を包み込む旨みに心奪われる。
衝撃的なのは、冷めても脂が一切べとつかないこと。
焼き立てが一番旨いのは間違いない。
しかし、冷めてここまで旨いサーロインには通常お目にかかれない。
満足度 5+




肉はやはり圧倒的に凄い。
焼きに関しては、炉窯がまだ新しいこともあり、炉窯ごとの癖をまだ掴みきれていないのかもしれない。
これから炉窯の特性がより活かされてきた時に、そのステーキの完成度はいったいどこまで上がるのだろうか。
想像するだけで楽しみで仕方ない。