No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年7月16日 ゆうじ

『牛の命をいただいて食べさせてもらっている。』
当たり前のようで、この言葉を意識している焼肉屋さんがどれ位あるだろうか。
そのいただいた命に感謝し、その肉をどれだけ旨く提供するかに心血を注いでいるのが”ゆうじ”店主の樋口裕師さんだ。
この日も裕師さんのお任せも、そんな思いが詰まった内容で、食べる側も感謝の気持ちを感じながら食べることができる。
前菜は4種類の小鉢で、それぞれハラミは塩昆布、ハツはトロロと共に、そしてツラミとセンマイも。




小鉢に続いて豚レバの燻製。
レバの燻製と聞くとレバ特有の臭いが強調されそうなイメージを抱くが、驚くほど臭みがなく、食べやすい。

ハラミは塊のまま素揚げにされ、内部は肉汁が詰まり綺麗な肉色を保っている。
素揚げにすることで表面がカリッとした食感になり、噛んだ瞬間に肉汁が溢れる内部のレア加減と絶妙にマッチする。


前菜を十二分に楽しんだ後にやっと焼き台が運ばれてくる。
“ゆうじ”のお任せ経験者であれば、網ではなく鉄板が運ばれてくるのを見て興奮が隠せないだろう。
この鉄板で調理されるのはレバニラ。
鮮度抜群で甘みの強いプリプリのレバとニラを甘みの強いタレと共に一気に投入する。
レバの色が変わればすぐに食べ頃で、レバの甘みをタレの甘みで包み込むマリアージュに惚れ込んでしまう。


ここで正肉を挟むが、この日は滋賀の木下さんの近江牛のモモ。
月齢28ヶ月の雌で、繁殖肥育一貫の木下牧場で生まれ育った個体だ。
網ではなく鉄板で焼くことでジューシーに仕上がり、ポン酢であっさりと食べることができる。




待ちに待ったホルモンの盛り合わせは、ハツ、コリコリ、シマチョウ、ミノサンド、ギアラ、フワ、ヤン、テッチャン、ガツシンを醤油ダレで。
やはり”ゆうじ”のホルモンは違う。
丁寧な下処理、焼きやすく食感が活きるカット、そして絶妙な味付け。
ハツに付いた脂やシマチョウの脂はどこまでも甘く、ヤンやガツシンのサクッとした食感は他では味わえない。

最後はあっさりとタン元のしゃぶしゃぶ。
丁寧に薄切りにされた黒毛和牛の生タンの根元を、出汁の中で泳がせる。
熱が入ったタンは食感だけでなく、香りと旨みも増す。
付け合せのワカメと一緒に食べてもまた旨い。
最後はタンの旨みも溶け込んだ出汁を使った”ゆうじ”特製ラーメン。
すっきりとしていながら、滋味深い味わいで、普段ラーメンを食べる習慣があまりない私がお代わりしたくなるほど。




デザートの小豆最中を食べ終える頃、時間は終電近く。
牛の命をいただいて最高の料理を食べた後は、感謝の意味も込めて、強烈な臭いをまとって電車に乗る。
周りの方々、すみません。