No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年9月18日 焼肉 しみず


兵庫の名門”川岸牧場”。
雌の但馬牛のみを約300頭肥育し、拘り抜かれたその牛は兵庫県内だけに留まらず全国で高く評価されている。
そんな川岸さんの新たな試みが始まっていた。
川岸さんが出荷する但馬牛の月齢は32,33か月。
一般的な27か月と比べて手間暇、コストが全く違う。
今の肥育方法でさえ長期肥育と言われているが、今回の試みは更なる長期肥育。
川岸さん自身、今の月齢で不十分とは思っていない。
研究を重ね、拘り抜いた結果が現時点の肥育方法なのだ。
それでもより高みを目指すために、実験的に今回の超長期肥育に挑んだ。
現時点でこの試みの対象となっているのは選び抜かれた3頭のみ。
その内の1頭が初めて出荷されたのだ。
月齢は36か月。

ただ長く飼っただけではない。
たらふく飼料を食べさせ、みっちりと36か月肥育したのだ。
そんな個体の肩を仕入れたのが”しみず”。
原価割れの心配を余所に、お値段据え置きで提供しているのは狂気の沙汰としか思えない。。
見せてもらったロース芯は肉色が濃く小振りで、見るからに味の乗った昔ながらの肉。
ここは贅沢に厚切りを塩胡椒のみで。
炭の量を調整しながら、網の高さを調整しながら、網の上から目を離さずに火を入れる。
その仕上がりは完璧の一言。
焼く前には確認できたサシは全て消え去っている。
朝日を浴びて消えてしまう霜のように、本物の霜降りは火を入れることで消えてしまうのだ。
そして信じられないきらい濃い肉の味を優しく包み込むように甘みも舌の上を走る。
普段食べているものとは全くの別次元。
頂点という言葉でしか表現できない。




もちろん薄切りのタレでも、いつも以上にぐっと肉の味が感じられる新しい世界観があるが、やはり先ほど食べた厚切りのロース芯があまりに最高だったついつい比較してしまうのは仕方ない。
決して蕩けるようなものではないが、タレをどんなに絡ませても隠れることのない肉の味が、この個体の素晴らしさを物語っている。






ちなみに次の超長期肥育の但馬牛の出荷は11月。
月齢は40か月ほどだろう。
こういった牛肉が存在する、そして食べることができる、という事実。
いったいどんな仕上がりになっているか、想像するだけでワクワクする。