No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年10月19日 銀座 うかい亭


鉄板焼きのステーキは油っぽい、と言う方がいるらしい。
余分な脂が落ちないから油っぽい、のだそうだ。
はっきり言ってしまうが、それは勘違い。
脂質が良くない肉を焼いてるからそう感じるだけ。
鉄板焼きと炭火による網焼きの違いによる問題ではない。
鉄板焼きは習得の難易度が高いが、ステーキには非常に適している。
焼きムラが出来にくく、均一な火入れがしやすい。
また、場所を動かくだけで温度調整を容易に行うこともできる。
表面は香ばしく、その中はふっくらと焼き上がるのは鉄板焼きの良さだろう。

そんな鉄板焼きの世界だが、残念ながら満足できるお店は非常に少ない。
すき焼きやしゃぶしゃぶの世界では顕著に感じるが、古く埃を被ってしまったような時間の流れに置き去りにされてしまったようなお店が散見されるのだ。
では何処で食べたら良いのか!?
私はここ数年鉄板焼きは”うかい亭”でしか食べない。
常により良いものを提供するという姿勢から生まれる進化、田村牛をはじめとした最高の牛肉、牛肉以外も一切の妥協のない素材、そして焼き手の技術。
そのどれもが既存の鉄板焼きというジャンルを超越した鉄板焼きである”うかい亭”を支える柱となっている。
紅葉鯛

牛タンの炭火焼き
分厚過ぎるタンを銀座店の料理長である半野さんが厨房で焼いてきてくれた。
どうやって焼いたらこれ程までにぷるんぷるんに仕上がるのか不思議。
そこに歯を立てれば、スーと肉の中に歯が入り込んでいく。
そしてタン自体の味を浮き立たせる味付けも、普段シンプルな焼肉を食べ慣れた私には衝撃が大きい。



栗のスープ

ヒレのタタキ
巧みに鉄板の温度差を利用して場所を動かしながら、表面に満遍なく焼き色を付ける。
断面を切り分ければ綺麗な赤身の肉色が映える見事な断面。
そこに塩、胡椒、生姜の絞り汁、生にんにく、あさつきと順々に盛り、最後に熱々のポン酢をかける。
タンの炭火焼もそうだが、素材そのものが味が見事に引き立てる味付けが素晴らしい。
もちろん肝心のヒレがしっとりとしていて、輪郭のはっきりとした肉の味をしているのだ。






鮑の岩塩蒸し


サーロイン
あえて6面全てにメイラード反応を起こさせ、あっさりと食べさせようとしている。
赤ワインソースの付いた肉片を噛み締めれば、電撃の如く走る甘みと旨み。
口の中で広がる濃厚な肉のスープには微笑むことしかできない。
2切れ目からは信じられない位山盛りのおろし山葵と刻み山葵が乗せられているのが、これでも不思議と辛くない。
あっさりと何切れも食べたくなるようなサーロイン。
ちなみに田村牛とのこと。




イチボ
若干レアめに焼いたイチボはそぎ切りに。
この日食べた肉全てに共通しているのが肉の味の強さだが、このイチボはその中での際立って肉の味が強い。
舌の細胞がざわつくかの様な刺激的で官能的な味わい。
こちらも田村牛。


ミスジ
試作品ということで頂いたメニュー。
薄切りのミスジをすき焼き風にし、松茸と一緒に。
肉自体も旨いが、醤油の香ばしさが絶妙な味付けが最高だ。

ガーリックライス

私が生れて初めて感動した食べ物は牛肉。
それは20年前に”うかい亭”で食べた田村牛なのだ。
しかもその時の焼き手は、20年経った今でも指名している小池さん。
もちろ今回もだ。
わざわざお願いして銀座店に来てもらったのだ。
“うかい亭”の中でも色々な焼き手のステーキを味わったが、私の中でのNo.1はこの小池さんなのだ。
私を牛肉の深い深い世界の入り口に立たせてくれた大先輩は、私の中で鉄板焼き業界最高の焼き手として揺るぎない位置に君臨している。