No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年12月16日 よろにく

山中さんから電話を受けた時に無理を承知でお願いしたブツ。
屠畜2日後の正肉を"くいしんぼー山中"で食べた後に、同じ個体のハラミとサガリを"よろにく"に持ち込み。
福永さんのハラミとサガリなんて、おそらく関東初上陸だろう。

マニア垂涎の横隔膜セットをふんだんに盛り込んだお任せコースはハラミユッケから始まった。
臭みが全くないクリアで力強い味わいのハラミは、躍動感溢れる弾力で我々を出迎えてくれる。



"よろにく"らしい創作系のアレンジを効かせたハラミのレアステーキは抜群の旨さ。
ゴマダレに全く引けを取らないインパクトなのはハラミ自体の旨み。

このハラミとサガリの本当のエネルギーを感じるには厚切りしかない。
ガリはプリプリとした弾力豊かで、その弾力を断ち切った瞬間に喉の奥まで響くような旨みが弾ける。




ハラミは更に凄い。
奥歯を必死に押し返す弾力はエネルギーに満ち溢れ、捌き立ての野生動物のようだ。
また、サシの重さが一切感じられず、舌の上には純度の高い旨みが残されていく。





ハラミは薄切りのタレでも。
濃厚なハラミの味わいと甘めのタレが驚くほど見事にマッチングしており、薄切りでも十二分に素晴らしい食感が活きている。


福永さんからは横隔膜セットだけでなくミノ、コプチャン、シマチョウもオマケで頂いた。
ミノはコリコリとした食感が響く。
今まで食べてきたミノとは比べ物にならない位臭みがなくクリアな味わい。


コプチャンもシマチョウも脂の甘みが実に上品で皮に旨みが漲っている。




福永さんの個体の内臓以外に面白かったのは44ヶ月の岡崎さんの近江牛のトモサンカク。
炙りで握れば、ご飯との調和が完璧に取られている。

薄切りでは塩でもタレでも。
塩とタレでそれぞれ別の顔を見せてくれるが、肉が良ければ良いほど、その顔はくっきりとしている。


もちろん定番のメニューに関しても抜かりはない。
但馬牛のタンは普段食べているものと比べて格段に小さいが、ぷるっとした弾力は強く、味わいは数段深い。

ハツやミノといった内臓系も安定のクオリティ。


シャトーブリアンやシルクロースは王道中の王道。


ザブトンにすき焼きに白トリュフが舞うのはこの時期ならでは。
煙草といったものよりも中毒性が遥かに高いのではないかと思わせる高揚感。
ザブトンの味わい全てが白トリュフに吹き飛ばされそうだが、それでも構わない程旨過ぎる。





〆は牛肉の時雨煮を彷彿させる肉饂飩。
肉そのものを食べているとしか思えない。

間違いなく正解。
福永さんのハラミやサガリのような逸品を持ち込むべきお店が"よろにく"以外にあるだろうか。
今まで知らなかった新しい世界に触れたような印象。
和牛の道は深く、そして果てしなく遠い。