No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年2月10日 Bon.nu ボニュ


現在和牛として定義されている品種は黒毛和種褐毛和種、短角和種、無角和種で、基本的には従来から日本に生息していた品種に海外の品種の血が混じった品種改良が行われて現在の姿になっている。
その4種以外に、外国の品種の血が入っていない純血種として見島牛と口之島牛がオフィシャルに認められている。
また、見島牛と口之島牛以外の純血種として知る人ぞ知る存在だったのが岡山県でひっそりと受け継がれてきた竹の谷蔓牛で、優良な系統として管理される蔓牛としては、日本最古の蔓牛と呼ばれている。
口蹄疫以降、宮崎県の一部生産者によっても竹の谷蔓牛の飼育が行われ、現在は年に1頭程度ではあるが出荷が始まったようだ。
そんな竹の谷蔓牛を食べさせてくれたのが、「美食の王様」こと来栖けいさんが昨年オープンさせた”ボニュ”。
いきなり竹の谷蔓牛のスネで作ったビーフジャーキーで始まるのはサプライズ。

自然

純血
純血種である竹の谷蔓牛のスネに黒トリュフをたっぷりかけてくれる。
味付けは塩のみで、噛むごとにグングン旨みが舌の上に広る。
竹の谷蔓牛、黒トリュフ、そして塩という3種類のみで構成されたシンプルな料理だが、だからこそ素材の持ち味がここまで引き出されることを実感。
満足度 5


キャベツ畑
1枚1枚キャベツの間にイチボを挟んだロールキャベツの様な料理。
ちなみに煮込まずに焼いているというのに驚かされる。
村上牛のイチボということだったが、肉の旨さに負けないキャベツの旨さに驚かされる。
満足度 4


シンプル

ボニュ焼き(竹の谷蔓牛のシンシン)
6時間かけて火入れを行うというボニュ焼き。
断面は綺麗なピンク色で、とにかく丹念に余熱を入れているのが分かる。
肉繊維の肌理は細かく、噛み締めると繊細な食感が伝わってくる。
味は外国品種の様な鉄分っぽさではなく、純血らしい力強さがある。
満足度 4

ボニュ焼き(竹の谷蔓牛の友三角)
友三角はシンシンよりもサシが入っているのが断面からも分かる。
食感は悪くないのだが、残念ながら肉の味は抜けた状態。
これは私が予約した日が遅く、無理に肉をキープしておいてくれたことが影響していると思われる。
満足度 3

ボニュ焼き(村上牛のイチボ)
じっくりと余熱で火を入れているボニュ焼きだが、表面は薄くカリッと仕上がる。
この日のボニュ焼きの中で最も理想的に仕上がっていたが、このイチボ。
まさに絶妙な火入れで、表面の薄皮1枚分だけ香ばしく焼かれていた。
普段から使用している村上牛というだったが、この日の中では肉の味が一番しっかりとしていた。
満足度 5


ボニュ焼き”クラシック”(竹の谷蔓牛のカメノコ)
ボニュ焼き”クラシック”は赤ワインに漬けてから焼いている。
通常のボニュ焼きのような素材のエッジが立っていないのだが、肉とソースのバランスといった料理としての完成度は非常に高い。
満足度 4


ボニュ

ナチュラ


希少性が高いものと旨いものは必ずしも一致はしないが、昔ながらの純血種にはやはり心惹かれる。
そして竹の谷蔓牛は間違いなく旨かった。
ただ今回の竹の谷蔓牛は純血ゆえの特徴は感じられるが、それが明らかに違うかといえば、正直そこまでではなかった。
それは元々そうなのか、食べた日の状態が理由なのかは分からない。
ぜひ次回の機会があれば、また竹の谷蔓牛を食べてみたいし、違う部位も食べてみたい。
そして昔一度だけ食べたことのある見島牛も”ボニュ”でならもう一度食べてみたい。
勝手な想像だが、食べてから飲食店の世界に入った来栖さんの料理は、素材の持つポテンシャルを如何にシンプルに引き出すかに拘っている。
これからも和牛の本当のポテンシャルをぜひ引き出し続けて欲しい。