No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年9月21日 銀座 やまがた屋


黒船襲来。
“やまがた屋”は焼肉屋なのかステーキ屋なのか。
ただ間違いなく言えることはここでしか食べられない肉があるということ。
どんな部位でも芯の芯しか使わない。
肉は目の前で塊から切り出されるのだが、削りに削って芯以外はバンバン落とされ捨てられる。
食べれるのに勿体無いという意見もあるかもしれないが、1番旨いところ以外は出したくないという店主・山形さんの気概を感じる。
焼きについては、すでに間違いなく牛肉史に名を残すレベルと言われていたが、更に円熟味を増したように感じる。
“北新地やまがた屋”では見ることが出来ない山形さんの焼きも、”銀座やまがた屋”ではライブとして目の前で見ることが出来る。
火力の強い箇所と弱い箇所を使い分け、網をの置き場を変幻自在に操る姿に目は釘づけだ。
味付けに関しても申し分ない。
塩もこれ以上でもこれ以下でもない絶妙な振りで、和牛の脂と向き合った味付けも素晴らしい。
この日は台風の影響で仕入れが難しく部位の種類が少なかったようだが、それでもしばらく興奮が冷めなかったやまがた劇場の全貌をここにお届けしたい。
キムチ
色々珍しいキムチが入っていてどれも旨いが、肉じゃないのでメモを盛り忘れてしまった。

ヒレとレバ
この日用意されていたのは佐賀県産のヒレ1本。
ヒレを5つに分けた場合はテート、シャトーブリアン、フィレ、トルネード、フィレミニヨンとなるが、フィレとトルネード辺りを切り出し周りも贅沢に削ぐ。
それを特製のタレに数分漬け込んだもの。
そしてレバは血管がない部分だけを削り出し、残りはバンバン捨てられていく。
全体の10%位しか使われてないのではないだろうか。
このヒレとレバを炭火で熱々に熱せられた鉄板の上で各自焼いて食べる。
タレで引き立てられたヒレの味わいと滑らかな舌触りのレバが堪らない。
満足度 4








タンステーキ
冷蔵庫に吊るされていた2本の黒タンから取れた分量は5人分。
脂ののった根元の芯の部分だけが丁寧に削り出される。
磨き抜かれたタン元は芸術的な美しさ。
それを上側と下側に切り分けて塩を振る。
万遍なく振られた塩は多すぎる様に見えたが、食べると完璧な塩加減。
焼いてる途中で脂で落ちる分量も見事に計算されている。
山形さんの火入れは見た目と違って繊細。(失礼しました)
決して肉にストレスを与えない。
身が締まらないように何回も裏返しながら火を入れ、火が強めに入った箇所はハサミで切り落とす徹底ぶりで、その姿は芸術家が彫刻を仕上げているようだ。
焼き上がったタンを切り分けるとこれ以上ない断面。
最初に下側を食べる様に言われるが、下側はぐにゅぐにゅとした食感、上側はサクサクとした食感でその違いをまざまざと教えられる。
それにしても香りも旨みの強さも半端ない。
満足度 5+













ハツ
ハツも怖い位周りを削り落とす。
大きな塊から取れた枚数はたった数枚。
最初は脂の部分だけが火に当たるように網を置き、脂にしっかりと火を入れる。
一方ハツの部分はレアで仕上げ、それぞれの旨さを最大限に引き出している。
有馬山椒との相性も抜群。
満足度 4


ミミカブ
ツラミかと思ったらミミカブという部位で耳の付け根の筋肉。
表面にしっかりと火が入り、中からは肉汁が溢れ出そうとパンパンになっている。
肉自体の旨みの強さと甘みが共存したクセになる旨さ。
満足度 5




ハラミ
“やまがた屋”のハラミは片面焼きで2種類。
焼いたハラミを2つ折りにし、焼いた面を外側にしたインローと焼いた面を内側にしたアウトロー
肉汁を包み込むようなインローは舌に焼いた面が触れ、ジューシーさがより強調される。
一方アウトローは焼けていないが肉汁が浮き上がった面が舌に触れ、官能的な舌触りが味わえる。
全く違った食感を楽しめ、どちらも旨みが溢れ出す。
鬼オロシにスダチと醤油を混ぜたタレも、ハラミの肉汁をまろやかにし、旨さを引き立てる。
満足度 5




テール
テールは最も強火で焼かれる部位。
ステーキハットを被せながらしっかりと表面をカリカリに仕上げる。
脂が強いが、味そのものが強い。
満足度 4


キノコサラダ

シャトーブリアン
細かなサシが散りばめられたシャトーブリアンはとんでもない厚さにカットされ、またまた周りを徹底的に削ぎ落とされる。
シャトーブリアンは他の部位とは全く違った火入れで、サッと炭の上で火を入れるとすぐにアルミホイルで包み、余熱で中心まで火を入れる。
ある程度表面の熱が中に入ったところでまた網の上で火を入れる。
これを繰り返すこと5回。
その都度網も替え、6回目の火入れは仕上げとして強めに仕上げる。
焼き上がりは見事の一言に尽きる。
中心まで熱々になっているが、断面は美しいロゼ色。
肉そのものも味が濃くて非常に旨い。
満足度 5












今までの“北新地やまがた屋”は金土だけの営業に変わり、新しくオープンした“銀座やまがた屋”は月曜から木曜までの週4日営業。
電話番号、住所は非公開で、完全紹介制。
しかも決して財布には優しくない価格だが、それに見合うだけの価値がある。
本当に旨い肉だけを食べたい人の為のプラチナシート。
予約の取りにくさだけがウリの店とは全く違う。