No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年10月17日 よろにく


焼肉屋でありながら季節感を感じさせてくれる"よろにく"。
それぞれの季節にそれぞれの感動があるのだが、強いて言えばこの10月が1年で最もヤバいコースが食べれるかもしれない。
この"よろにく"で待ち構えていたのは国産の松茸、そして黒からやっと変わった白トリュフ。
1年のうち、この時期は松茸と白トリュフがかぶる時期でもある。
もちろん主役の牛肉も凄い。
田村さんが肥育した神戸ビーフだ。
純但馬血統の田村牛といった方が分かりやすいだろうか。
個体識別番号1375150307、月齢35ヶ月、雌
血統は福芳土井-鶴山土井-照長土井
そんなラインナップの中の1品目はシンシンと松茸。
シンシンはセミドライのビーフジャーキーにしてあり、程よく旨みが凝縮している。
ビーフジャーキーの香りを包み込む松茸の香りも素晴らしい。

シンシン、ランプ、ハラミはそれぞれ軽く炙って卵黄でユッケ風に。




生の黒タンの根本は厚切りと薄切りの2種類で。
薄切りは滑らかな舌触り、厚切りはジューシーでサクッとした食感、そして旨みのインパクトが強い。




ユッケ風に食べたシンシン、ランプ、ハラミは塊でも。
シンシンやランプは奥歯で噛みしめる力に比例するかのような純度の高いジュースをこぼす。
ハラミのプリプリとした食感とその素材の持つ生命力のようなエネルギーが伝わってくる。




ハラミも含めて全て但馬牛の3種類だが、今度はタレでも出してくれる。
薄切りの塩、塊、そして薄切りのタレでその表情を激しく変えてくれる。




普段はハチノスを使ったお吸い物も、この日はタンの昆布締めと松茸。

定番のシャトーブリアンとシルクロースも欠かせない。


一口食べて目を見張ったのが黒タンの味噌煮込み
ほのかに柚子の香りがアクセントになり、濃厚な味噌とタンの旨みが絡みあう。


飲んだこともないような濃密な松茸出汁に、更に追い松茸をし、そこでサーロインのしゃぶしゃぶ。
贅の限りを尽くしたような料理だが、今まで経験したことのないような香りに意識がどこかに持っていかれそうになる。







ここまでですでに圧倒されっぱなしだが、ヒレカツも混ぜてもらえるとは嬉しすぎる。
均一でレアな断面のヒレカツは、上品でヒレの繊細を最もはっきりと感じさせてくれる。


定番となりつつあるザブトンすき焼きのトリュフかけも、この日は白トリュフバージョン。
今までの黒トリュフでも十分すぎる程旨いのだが、この白トリュフは次元が違い過ぎる。




〆は素麺ではなくテールの出汁を使った松茸の焼きうどん。
テール肉の旨さと「これでもか!」という松茸の香り。
その全てで悶絶せざるを得ない。


"よろにく"を訪れる度に痛感する。
これ以上は存在しないと。
素材のポテンシャル、それを活かしきる技術、そして概念に縛られない自由な発想。
その全てを備える最高峰が南青山にあるのだ。