No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年10月26日 くいしんぼー山中

365日欠かさず思うことがある。
『旨い牛肉が食べたい』
雨の日も、風の日も、雪の日も、お正月も、風邪をひいても、どんな日でも想いは変わらない。
それを叶えてくれる場所が”くいしんぼー山中”だ。
“くいしんぼー山中”で初めて食べた日の事は今でも忘れられない。
それまで築き上げてきた牛肉に対する概念が全て崩れ去った。
それから唯一無二のこの牛肉の虜になった。
近江の福永さんは、子牛の血統は兵庫県産の純但馬牛の雌のみ、それを一切ビタミンコントロールせずに月齢38ヶ月位まで手間を惜しまず丁寧に育て上げる。
セリに1頭も出さない為に、サシを入れるためのビタミンコントロールの必要がない。
全ては昔ながらの味を守る為だ。
福永さんが肥育した特選近江牛のほとんどは”くいしんぼー山中”に送られる。
福永さんは山中さんの為にこの牛を肥育している。
そして山中さんは福永さんがいるから”くいしんぼー山中”を続けることが出来る。
お互いが絶対的な信頼関係で結ばれているからこそ成立している関係と言えるだろう。
成熟しきった牛肉に熟成は全く必要ない。
熟成させた香りを楽しむのではなく、個体そのものの味わいを楽しむのだから。
屠畜されて2日しか経っていない牛肉の輝きは全く違う。

山中さんは炙り用にフィレミニヨンとランジリを切り出してくれた。
レアならここが一番旨いのだという。
一口食べると、山中さんの言葉に頷くことしか出来ない。
今まで食べてきた牛肉とは全く違った肉の味、甘みを小さな1切れが教えてくれる。
滑らかで力強い味わいに身体の細胞全てが喜ぶのが分かる。
(フィレミニヨン)




(ランジリ)



コンソメスープは温かい物と冷たい物があるが、個人的には冷たい物がオススメ。
牛そのものが液体になったのかと錯覚する程のピュアな旨さ。
山中さん曰く「コツは何もない。ただ良い牛肉を使うことだけ」

ステーキは肩ロース側のリブロースを焼いてもらう。
誰が見ても、その牛肉が他の牛肉と違う事は一目瞭然だろう。
まずその色。
これ以上ない濃い色合いは小豆色という言葉そのもの。
しっかりと飼料を与えて、じっくりと長期肥育したからのこその肉色なんだろう。
断面は「照りと粘り」に満ちている。
そしてロース芯の大きさも違う。
今まで散々見慣れてきたロースと同じ部位とは思えない大きさのバランスだ。
山中さんが焼くステーキは胡椒が効いていて、醤油の風味が食欲を刺激するクラシックタイプのビフテキ
しかし、これが福永さんの牛肉のポテンシャルを100%引き出してくれる。
今までこのロースを色々な食べ方で試したことがあるが、結局は山中さんが焼いたステーキが一番旨かった。
奥歯で噛み締めることで、包み込まれていた牛肉のエキスが物凄い勢いで舌を包み込む。











ヒレはステーキではなくビフカツにしてもらう。
最近はヒレカツを食べれるお店が増えたが、ビフカツにすると素材の違いが更にはっきりとする。
臭みが微塵もないヒレは旨みに溢れ、衣やデミグラスソースと踊るように絡み合う。




世の中のハンバーグ好きに教えてあげたい。
日本で一番旨いハンバーグが"くいしんぼー山中"で食べれることを。
肉汁派、肉ゴロゴロ派など、好みの分かれるハンバーグだが、ここまで肉の味がストレートに舌に届くハンバーグは他にはない。
最後はハンバーグを少し残し、そこにご飯を投入し、デミグラスソースと混ぜ合わせて食べるのが鉄板。



食後は山中さんと延々と肉の話をするのがまた楽しい。
日本の和牛業界の為に、どうやってこの福永さんの牛を世の中に知ってもらったら良いのだろうか。
和牛に係る全ての方にこの牛肉を食べてもらいたい。