No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年11月29日 多平

人通りもまばらな路地裏に1軒の焼肉屋がたたずんでいる。
11時30分の開店と共に馴染みのお客が入り、各々がいつものお気に入りのメニューを注文し、さっと食べてお店を後にする。
お客は皆、鼻息荒く意気込んでやってくるというより、肩肘張らずに日常の行為として焼肉を楽しんでいる。
そんな”多平”の店主の仕事は生真面目の一言に尽きる。
注文が入るたびに冷蔵庫から取りだした肉を切り、その都度タレに絡める。
何よりそのタレが異常に旨い。
ド派手なインパクトはないのだが、肉の味を後押しするようにグングン舌を押し付ける旨さがある。
こういったタレの旨さからも”多平”の実力が感じられる。
並のタンが品切れという事で注文した上タンは、ザクザクの食感。


この日はタンよりもハツの方が印象深い。
ぷっくりと弾力を持ったハツは甘みが強い。

圧倒的に旨いのがハラミ。
“多平”を訪れたのなら、何を差し置いてでも食べて欲しい。
プリッとした肉片から溢れる肉汁がタレとマリアージュして、立体的で深みのある味わいが生まれる。
これほどのハラミが常備されていること自体が驚きだ。

ロースの肉質自体はいたって普通だが、このタレで食べるとかなり旨いのだから凄い。

上ロースはサシがバリバリ。
舌の上で肉が蕩けながら甘みを広げる。

追加はミノとハラミお代わり。
ミノは分厚いところを惜しげもなく出してくれる。

そしてお代わりハラミは相変わらず最高。

通し営業なので昼も夜もメニューが一緒なこともあり、最強の焼肉ランチはここ"多平"にある。
気取らない、飾らない、ただただ目の前の肉に向き合っている店主にリスペクト。