No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年11月30日 よろにく

“よろにく”を知らない焼肉好きはいないと思う。
だが、”よろにく”に行ったことがないとう焼肉好きはまだいるだろう。
勿体無い。
実に勿体無い。
私がどこかの国の石油王だったら、そんな肉好き全員に”よろにく”でご馳走したいのだが、残念ながら庶民サラリーマンという実態は覆せない。
出来ることと言えば、”よろにく”に通えば辿り着けるであろう最終地点を見てもらうことくらいですかね。。。
前菜は炙ったヒレとセンマイ刺し。
炙ったヒレは雌牛らしい上品さと力強さが共存している。
センマイ刺しは通常のコースでも食べれるピリ辛の味付けではなく、よりダイレクトにセンマイの味わいが届き、コリコリの食感も個人的には大好きだ。


ローストビーフはランプが使われていて肉々しさが際立っていて、飲み込むのが勿体無く感じる。

久しぶりに食べたのがハツ。
分厚いハツはタンとはまた違った独特の食感で、タンよりあっさりと味わえる。

タンは生の黒タンの根元を2種類のカットで楽しめる。
まずは薄切り。
片面焼きで、肉汁が浮いてきた頃合いで引上げ、その面を外巻にして舌に乗せれば、滑らかな舌触りにエロスを感じる。

続いて厚切り。
こちらは黒タンだからこその濃密な旨みとサクサクの食感が衝撃的。



スペシャルなお任せには純但馬の神戸ビーフが出ることが多いが、この日は田村さんが肥育した月齢36か月神ビーフのシンシン。
薄切りのタレで食べても肉の味が舌の上で踊る極上品。

ツチノコも薄切りのタレで。

田村さんの神戸ビーフシンシンは厚切りでも衝撃的。
蕩けるような柔らかさではなく、肉繊維そのものが繊細で柔らか。
何より舌の上から喉、鼻まで抜けていくインパクトは、他の牛では体験することの出来ないもの。

炙ったぶつ切りユッケは黒トリュフと一緒に。




黒トリュフで十分贅沢なのだが、田村さんのシンシンを薄切りにし、白トリュフを削るというシンプルな料理からは、素材そのものの存在感がぐいぐい感じられる。




繊維質を感じさせるカイノミはタレと黒胡椒で味付けされ、ステーキサンドに変貌する。
肉そのものが旨いのはもちろん、タレと胡椒のバランスが秀逸で、「旨い!旨い!!」と叫ばずにはいられない。






通常のコースでもお目見えするシャトーブリアンとシルクロースも外せない。


そしてミノ。

ミスジとシルクロースはたっぷりのネギと一緒にしゃぶしゃぶに。
ネギの甘みと出汁の旨さ、そして牛肉のコクと旨みが三位一体で新しい世界を教えてくれる。
今まで食べてきたしゃぶしゃぶとは完全に別物。


ヒレカツは細かで軽めの衣の中には均一な火入れの見事なロゼ色の断面。
関東でヒレカツとものが認知されていない時代から、ヒレカツという存在をリードしてきた“よろにく”は他のお店とは明らかに別次元の完成度に辿り着いている。
食感だけでなく、飲み込む瞬間、いや飲み込んだ後の余韻まで完璧すぎる。



定番になりつつあるザブトンの白トリュフかけ。
ここまで「牛肉、牛肉」と騒いでいる私が思わずうっとりしてしまう白トリュフの魔力。
ザブトンが完全に脇役になっているが、この尋常ならざる旨さなら仕方がない。



〆はシルクロース茶漬け。
出汁とサーロインの甘みが見事に融合した至高の一品。

もちろん、初めてであれば通常のコースやアラカルトで十分過ぎる程満足出来るであろう。
ただし、せっかく”よろにく”という最高峰を知ったのであれば、その頂を見るまで登り詰めて欲しい。
そこから見える景色は今までとは全くの別世界なのだから。