No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2017年3月29日 和田金


松阪牛の金銀の銀は"牛銀"。
そして金は"和田金"だ。
"和田金"は松阪のすき焼きの元祖と言える存在で、信じられないことに自社牧場で肥育した純但馬血統の松阪牛のみを使用している。
自社牧場で肥育された松阪牛は、もちろんセリに出されることがない。
その為だろうか。
意図的にサシを入れるようなこともなく、小豆色と呼ぶに相応しい肉色。
そして"くいしんぼー山中"で食べる福永さんの純但馬血統の近江牛に近い食感と深い味わいを持つ。
松阪牛の中でも純但馬血統の個体が非常に稀といれる時代に、自社牧場でとことん味を追求した純但馬血統の松阪牛をいつでも食べれるという奇跡のありがたさが分かるだろうか。
しかも今回は7月26日に出版した『肉バカ。』の取材ということもあり、"和田金"が掲げる《松阪肉元祖》を心行くまで堪能出来た。


あみ焼(特松)
小振りで肉色の濃いシャトーブリアンは、見るからに極上品。
特製のタレに潜らせ網の上で焼かれと、香りと旨みの華が開く。
柔らかさはもちろんだが、上品で後味のすっきりとした味わいに思わず目を閉じる。





寿き焼(松)
松竹梅と3種類あるすき焼きの違いは個体のランクではなく、部位の違い。
松はロブロースの中でも最もすき焼きに適しているという肩側。
一口で頬張れば、ロース芯と巻きが絶妙に絡み合い、繊細さと力強さを兼ね備えた濃密な旨みが口の中を占領する。







寿き焼(竹)
竹はリブロース
パッと見はサシがかなり弱く見えるが、口の中に入れた瞬間に全ての心配が吹き飛ぶ。
すき焼きらしい柔らかさはもちろんだが、とにかく割下に負けない肉の味の濃さがある。




寿き焼(梅)
梅はサーロイン。
密度を感じさせる食感は食べ応えがあり、肉本来の旨みを余すことなく伝えてくれる。



《松阪肉元祖》の言葉に嘘偽りなし。
心から和牛の旨さを教えてくれる。
市場を席巻するサシ重視の和牛ではなく、味わいだけを追求した旨さ。
この味を知っているということが自分の財産かもしれない。