No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年4月2日 平

「オススメのステーキ屋さんは何処?」
こう聞かれた場合、どんなお店をオススメするだろうか。
私には大好きなステーキ屋さんがある。
しかし本音を言えば万人にオススメできるお店ではない。
ロケーションを大事にする人であればあまりオススメできないかもしれない。
素敵な女性と愛を語らうお店ではないかもしれない。
しかし極上のお肉を素晴らしい火入れで食べれることは間違いない。
しかもお皿の上のステーキからは想像できないほどリーズナブルな値段でだ。

この日は予算を伝えてそれで食べれる量のシャトーブリアンを焼いてもらった。
冷蔵庫から出されたヒレの塊を見せられただけで私の心臓はバクバクし始める。
それを店主の目崎さんはスッと包丁で切り分けると分厚い1切れがまな板に倒れる。
その仕草に私の目は釘付けだ。
塩を振り炭火の上の網に乗せる目崎さんは焼き始める。

まずは炭の近くで、それから少し炭から離す。
丁寧に肉をいたわりながら火入れを行う目崎さんの表情は笑顔。
目崎さんと肉との対話が終わるとその完成品はやっと私の前に運ばれる。

見事な断面だ。
そして表面のカリッとした焼き上がりも完璧。
その肉片を口に運べば、驚きはさらに広がる。
豊かな香りに包まれて、エグミを一切感じさせない旨みが強烈に押し寄せる。
こんなステーキが銀座の炉窯のあるお店以外で食べれるのだ。
色々食べてきたつもりだが、これは本当に凄いことだと思う。

最後にロケーションについて少し書くが、この"平"は湯島の駅から徒歩数分の路地裏にある。
ビルの2階にある店内はカウンターのみで、場末のスナックを居ぬきで使っているのだが営業していた当時をそのまま残してある。
初めて訪れる人には、本当にここで極上のステーキが食べれるなんて信じられないだろう。
だが勇気を振り絞ってドアを開けて欲しい。
至福の時間が約束されているのだから。