No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2008年3月16日 うかい亭表参道

うかい亭は私が最も気に入っているお店の一つだ。
初めてうかい亭に行ったときは、こんな美味しい物は初めて食べたと心から感動したのを今も覚えている。
10年ほど前の二十歳頃の話だろうか。
それから何年経っても、何か記念があれば必ずうかい亭を訪れている。
正直一番大事にしたいお店である。
しかし、ここ数年うかい亭は新店舗展開が行われている。
以前鉄板焼きは、八王子と横浜だけであったが、銀座・あざみ野・表参道と次々に新店舗がオープンしている。
店舗が増えて予約が取りやすくなったり、違った雰囲気を楽しめたりといったプラスの他に、若干のマイナスも存在するのが現実だ。
一つは従業員(特に焼き手)の質が追いついていないこと。
これは非常に残念なことがだが、お店を訪れると毎回感じることだ。
確かにどれも美味しいのだが、以前と比べてしまうとやはり、鮑の蒸し加減、肉の焼き加減、そしてガーリックライスのでき、こういったところで差を感じてしまう。
もう一つはMeat。
以前は、鳥取との県境にある兵庫県の契約牧場で飼育されたうかい牛のみを使用していたが、店舗数が多くなるにつれ当然Meatも足りなくなる。
足りない分は、料理長の目利きで選んできたMeatを使用する。
勿論それだって非常にいい物だし美味しいのだが、うかい亭ファンとしてはちょっと寂しさを感じる。
今回は万全を期して、電話予約の際に焼き手の方はベテランをつけてもらうようにお願いしておいた。
表参道店は、今までのうかい亭とは若干違い、大きな窓からは青山の景色が一望でき、非常に素敵だ。
だが、Meatの評価と関係ないのは言うまでもない。
アミューズはフォアグラのフラン。
非常に濃厚で美味しい。
期待が高まる。
オードブルは桜鯛かアイナメどちらかを選べるのだが、今回はアイナメをセレクト。
これがまた美味しい。
カリカリに焼かれた皮とプリッとしながらも柔らかい身がソースと絡み合って何とも言えない。
Meat以外もこんな旨いのはうかい亭以外知らない。
スープは冷製グリーンピースのスープ。
グリーンピースの香りが非常に心地よい。
気持ちの高ぶりが激しくなった頃に鮑の岩塩蒸しが登場。
今日も青森の黒鮑である。
黒鮑は刺身で食べるには若干固めだが、火を通すと素晴らしく柔らかくなる。
今回の黒鮑も非常に肉厚で、この時期の蛤の出汁のソースと絡まって最高の旨みだ。
今まで鮑は色々食べてきたが、うかい亭で食べる鮑以上には出会ったことがない。
肉厚の鮑と季節ごとのソースが本当に美味しい。
このソースをバケットにつけて食べるのだが、これが病みつきになる。
勿論、肝も最高だ。
鮑を食べ終わると、目の前の鉄板でニンニクチップが作られ始める。
Meat登場の合図である。
今回はコースのうかい特選牛サーロイン(110g)に加えて、うかい牛テンダーロイン(150g)を追加した。

ステーキの焼き上がりを待っている間というのは、本当に楽しい。
焼き手の一挙手一投足から目が離せない。
いつか自宅を建てるとしたら、鉄板と網焼き用の設備は必須だ。
こんな事を考えているとMeatが焼きあがった。

まずはテンダーロインから。
赤身が柔らかく、肉の旨みが噛み締めるたびに溢れてくる。
脂の旨みとはまた違ったヒレ特有の肉の旨みが最高である。
次はサーロイン。
一転、脂の旨みが一気に口に広がり、蕩けていく。
ヒレの赤身の旨みと一緒にほどける感じと、サーロインの甘い脂と一緒に蕩ける感じは全く違った美味しさだ。
どちらも甲乙付け難い。

ご飯はいつも通りガーリックライスをセレクト。
普通の白米なのにモチモチとしてもち米のようだし、香りつけの醤油も控えめでいい。
うかい亭のガーリックライスは他の鉄板焼きのガーリックライスとは全くの別物。
他の鉄板焼きのガーリックライスは食べれなくなる。
最後は別室でデザート。
セレクトした苺のミルフィーユはサクサクで美味しかった。
今回はここ数年では一番感動的だった。
これぞうかい亭といった満足を十分に感じることができた。
これはひとえに焼き手の方のおかげである。
鮑の蒸し加減、肉の焼き加減、そしてモチモチとしたガーリックライス。
全てが完璧だった。
最後に焼き手の方に挨拶をし、次回は指名させてもらうことを約束した。
やはりうかい亭は特別なお店である。
ただ、店舗数を増やすことによって、全体的なレベルが下がらないことだけを祈る。
そして私は今回担当してくださった焼き手以外にも、うかい亭の最高の食材を最高の形で味あわせてくれる焼き手を探し続けなくてはいけないだろう。