No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年7月5日 素敵亭


知る人ぞ知る関東屈指の牛飼い名人・増田順彦さんが肥育する増田牛。
自身の経験から選び抜いた血統の子牛に、炊いた大麦など独自の配合飼料を与え、通常月齢27ヶ月程度で出荷されるところ、増田牛は34ヶ月、特に純但馬血統では38ヶ月まで丹精込めて肥育される。
生産効率よりもその味わいを最優先した肥育方法の答えは、増田牛の濃い肉色、脂の融点、味の濃さにはっきりと出ている。
その増田牛を取り扱って10年以上というステーキ屋さんがある。
場所は増田牧場と同じ群馬県高崎。
焼き手の加瀬田さんからは、単純に地元だから増田牛を使うのではなくとにかく増田牛の旨さにひかれて使い続けていること、そして鉄板焼きに対するプライドがカウンターを通してひしひしと感じる。
加瀬田さんが焼いてくれたのはサーロイン2種類で、仕入れてから更にお店の冷蔵庫で寝かして屠畜から2ヶ月程度のものとそれに比べると割と浅めのもの。
寝かしが浅めのサーロインは滑らかで口溶けの良い脂が広がるが、べとつきを一切感じさせない。
その脂の甘みの後から赤身の旨みが強く押し寄せる。


この時点で十分過ぎるほど満足してしまったのだが、長めに寝かせたサーロインを一口食べるとその味わいに驚きを隠せない。
赤身のコクと風味、そして旨みがさらにワンランクなのだ。
個体差の影響も若干あるかもしれないが、明らかに寝かしてる期間が影響している変化だ。


今まで何度か書いていると思うが、やはりその牛の良さを知るにはサーロインが一番差が出やすく、そして分かりやすい。
ここまであっさりとしていながら甘みが強く、そして赤身の旨みが強い肉を食べたことがある人がどれだけいるだろうか。
そんな極上品を常に食べれる環境があるのは銀座ではなく高崎という驚き。
当然値段も銀座の半分以下。
"素敵亭"の増田牛を食べる為だけに高崎を訪れる価値は十分過ぎるほどある。