No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年4月5日 神戸牛炉釜炭焼ステーキ IDEA 銀座


超高級ステーキ屋として有名な"あら皮”が好んで扱うことで一部のマニアには超有名な勢戸グループの三田牛(神戸ビーフ・但馬牛)。
勢戸グループは何人かの生産者の集まりだが、今まで食べてきた中で個人的に特に抜きんでていると感じるのが勢戸和孝さんと東良さんの肥育する個体。
この日の”イデア”はそんな東良さんの極上個体がずらりと並んだ異次元空間になっていたので、他にも極上個体が揃っていたが全て東良さんの部位をチョイス。
個体識別番号1375141183、月齢34か月の雌
血統は丸宮土井-照長土井-谷美土井の純但馬牛

前菜というカテゴリーに当てはめる事が罰当たりなタンステーキ。
しかもこの日は運よく、黒タンは黒タンでも但馬牛の黒タン。
小振りで締まったタンは、馬鹿でかい真っ白な脂っぽいタンとは一線を画す味わい。
柔らかな繊維質は、炉窯でじっくりと火入れされる事でプルンプルンの弾力が生まれ、噛めばじっとりと甘みが広がる。
通常の黒タンでも”イデア”で食べるタンステーキを超えるタンは無いと思っていたが、但馬牛の黒タンバージョンは更に1ランク上の凄さ。





メインは東良さんの個体で仕入れられている部位を全て制覇。
シャトーブリアンは焼く前の状態からして凄い。
赤身の凝縮感がハンパないオーラを出している。
焼き上がった瞬間から漂う香りは最高級の和牛のそれそのもの。
肉片を口に頬張れば、奥歯から歯茎、そこから舌まで、口の中全てを覆いつく濃密な旨み。
噛むほどに自分の心拍数が上がっていくのが分かるほどの旨さを感じる。







一変して、ランプは心地良い適度な噛み応えがあり、旨みの力強さが肉汁に満たされている。
赤身ブームと呼ばれる時代があったのであれば、こういった個体の赤身まで辿り着いて欲しかった。
揺るぎない最高の旨さがここにあるのだから。




イチボは滑らかさと甘みの芸術。
表面のカリッとした仕上がりとのコンストラストも素晴らしい。



焼く前にはしっかりと入っていたサシが、炉窯から出てきた後には姿を消してしまったのがサーロイン。
朝日と共に消えてしまう霜の様に、本来の「霜降り」がそこから感じられる。
しかし、肉片を噛み締めれば、再度サシの存在感が現れ、赤身の旨みをぐっと引き上げる。
ゼリーを彷彿させる唯一無二のサーロインが旨すぎる。







生産者である東良さん、肉質を見極めベストな状態まで寝かした垣本さん、炉窯を駆使して最高の火入れを実現した菅井さん。
最高の匠から匠へバトンタッチされてきたステーキは、どこまでも深く奥行きのある、心躍るような最高の旨さであった。
こんなステーキが食べれるお店が日本に他にあるだろうか!?
探し求め続けた果てに、辿り着いたのがこの”イデア”なのだ。