No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2008年4月11日 M's

松阪牛は言わずと知れたブランド和牛の最高峰に君臨している存在だ。
では、焼肉屋さんで本当に旨い、さすが松阪牛と感じたことはどの位あるだろうか。
正直なところ、私は1,2回しかない。
松阪牛が美味しくないと言っているのではない。
当たり前だと言われればそれまでだが、本当に美味しい松阪牛を食べさせてくれるお店が少なく、しかも、本当に美味しい松阪牛は恐ろしく高級なのだ。
焼肉屋さんで松阪牛を前面に出していると言えば、つる屋(青山、関内)、京城、肉のたじま、焼肉割烹松阪(銀座)、肉料理松阪(赤坂)、やまと(千葉)などがあるが、本当に旨い松阪牛が食べれるお店は何処だろう。
私の経験ではつる屋以外は疑問が残るし、つる屋でも本当に旨い松阪牛は常備できていないだろう。
あの位の値段で出せる松阪牛は、確かに松阪牛という名前は付いているだろうが、最高峰の味わいを感じさせてくれない。
松阪牛はブランド和牛の中でもプレミア料金が一番加算されている。
必然的に焼肉屋さんで食べる松阪牛は、松阪牛の中ではランクがそれほど高くないものになってしまうのだろう。
本当に旨い松坂牛は銀座の岡半や三重の和田金や牛銀といったお店で食べれるのかもしれない。
勿論お会計も別格だが。
そんな松阪牛だが、焼肉屋さんの看板に堂々と書かれていると無視できないのが、肉好きの悲しい性である。
今回は二子玉川の『松阪牛焼肉』と書かれたM'sを訪問してきた。
お店の前には本日のオススメが書かれていて期待が高まる。
まずレバ刺し。
臭みもなく歯ごたえも良いのだが、旨みが若干足りない気がする。
厚切り上タン塩はなかなかの一品だが、隠し包丁が細かく入りすぎていて、タンのサクサク感を若干殺してしまっていて勿体無い。

クラシタ・ハネシタ・ミスジ・三角バラ・上カルビ・イチボが大きな皿に盛られてきた。
圧巻である。

クラシタやハネシタなどをしっかりと区別しているところに好感を持てたが、肝心のMeatはそれほどでもなかった。
全体的に熟成は短めのようだし、イチボはサシが少なく硬めの肉質だ。
クラシタも普段私が食べているものと比べるとかなり肉質が下がる。
ハネシタは東京ではザブトンと呼ばれていてクラシタのあばら側へと続く肩ロースであるが、甘い脂を感じる事ができなかった。
この中で旨かったのは、三角バラくらいだろうか。
これでは全然足りないので、サーロイン・ミノサンド・コプチャンを追加した。
このサーロインで救われた気がした。
確かにこのサーロインは旨い。
ただし、脂身がかなり付いていて、美味しく食べれる部分が若干少ない。

原価が高いので仕方ないかもしれないが、こういった事をするお店があるから、松阪牛を食べて満足できる事が少ないのだろう。
シャトーブリアンもあるとの事だったが、値段に見合うものが出るのか不安だったので注文はせず、冷麺で〆た。
ここでも松阪牛を前面に押し出したの焼肉屋さんに対するイメージを変えることはできなかった。
全体的にそこそこ美味しいとは思うが、これぞ松阪牛といった印象は受けなかったし、松阪牛以外を使用していて、ここより旨くて安いお店は沢山ある。

全国の和牛生産者のレベルは上がっているのだ。
松阪牛でなくても旨い和牛はたくさんいる。
サシは血統が大事だろうし、旨みはストレスの無い環境づくりや飼料など生産者の努力によるものだ。
牛の銘柄でなく、本当に旨い肉を常に食べさせてくれるお店がもっと増えて欲しいし、銘柄にこだわるのなら、何処に出しても恥ずかしくないようなものを食べさせて欲しいものだ。
それが出来ないのなら生産者に対しても、お客さんにも失礼だと思う。