No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2009年10月23日 焼肉酒家 傳々

久しぶりに”食べログ”を見てみると、世の中には様々な評価があるようだ。
肉質、味付け、食べさせ方、予算、雰囲気など様々な視点で評価されているのだろう。
私個人の好みの話になるが、今まで食べてきた焼肉屋さんの中での最高峰は”よろにく”。
赤身から霜降りのまでの正肉、そしてタンやハラミの肉質の素晴らしさ、そして肉質に対する値段、毎回変化があって飽きない懐の深さ、どれをとっても他店を圧倒するレベルだろう。
(強いて言えば、タンやハラミを除いたホルモンの弱さがあるが、それを感じさせない完成度の高さに脱帽。)
そんな”よろにく”に唯一対抗できる能力があると思えるのが”傳々”だ。
色々な意味で賛否両論あるお店だが、肉質の高さ、食べさせ方等”よろにく”と並んで、都内で群を抜いた存在ではないだろうか。
新規開拓や他のお店の定期訪問をしても、結局は”よろにく”や”傳々”の圧倒的な実力を再認識しているだけなのかもしれない。
今回の”傳々”では、これだけ通っても、まだまだ経験したことのない驚愕の旨さに遭遇した。
まず、刺身盛合せは牛刺し、レバ刺し、ココロ刺し、ミノ刺し、タンユッケ、そしてヒレミミの塩ユッケ。
どれも相変わらずの旨さである。
特にリブロースのカブリを使用した牛刺しは、ほど良い柔らかさと甘みのある肉質で、薬味のミョウガとの相性も良い。
今回初めてだったのがヒレミミの塩ユッケ。
ヒレミミといえども、しっかりとサシが入っている。
繊細で柔らかな肉質で、塩味でも赤身の旨さがしっかりと感じられて旨い。
なんとも贅沢な一品である。



極上の刺身を満喫した後は、いよいよ焼きである。
タン元は目を疑うような美しさ。
味付けは醤油ベースのタンタレを選択。
7割程度プレーンで焼き上げ、タンタレに浸してから、残りを焼け上げると、タンタレの香ばしさと極上タン元のジューシーな旨みが最高の組み合わせ。

いつも以上に素晴らしい肉質だったのがハラミ。
ハラミらしいジューシーな肉汁は、しっかりとした旨みが詰まっている。

焼肉屋さんではそうそうお目にかかれない程すごいシャトーブリアンが登場。
全員お皿の上のMeatに目が釘付け(笑)
これほど繊細で、旨みの濃いシャトーブリアンが食べれるとは!
これより旨いMeatはそうそう存在しないだろう。

私が一番好きなシマチョウは、この傳々のホルモン。
甘い脂が口の中で蕩けて、もっと噛みたいのに噛めないぐらい。
はぁ〜旨い。

傳々でシマチョウと並んで必ず食べたいホルモンが上ミノ。
シコシコした食感が素晴らしく、一緒に食べるネギムンチとの相性も最高。

見る者全てを圧倒する程のMeatが登場した。
リブ芯とリブ巻き、カブリの盛合せである。

カブリは硬めの肉質の印象があったが、それを覆すほどの程良い噛み応え。
そしてお肉らしい旨みがしっかりとしている。

柔らかで上品な甘みと旨みがあるリブ芯は、刺身で食べても旨いだろう、と想像してしまうほどの肉質。
細かなサシがびっしりと入っているが、全くしつこさもなく、飲み込んだ時の感触も非常に滑らかで軽い。

リブ芯とリブ巻きを一緒にリブロースとして食べると感じにくいが、リブ巻き単体で食べるとリブ芯との違いは明らか。
リブ芯よりも深いコクがあって、脂の甘みが一際強い。
リブ芯はモミダレだけでも十分だが、リブ巻きはツケダレもつけて、パクリと頬張りたい。
リブ芯とは一味違った口の中での蕩け方も素晴らしい。


久しぶり食べたいと思っていたウデが登場。
赤身らしい旨みが濃くて、非常に旨い。
しっかりサシの入ったリブロースの次にさっぱりとしたウデというのは非常に心地良い。
こういった全てのお肉を一番美味しく感じる順序・食べ方で堪能できるのはお任せの醍醐味だろう。

ここ最近頻発しているので、高矢店長も避けようとしたようだが、あまりにハラミの質が良かったとのことで、今回も大阪風の食べ方でハラミを味わう。
他店の特上を越える肉質のハラミを豪快に焼き上げ、タレ・卵の黄身・ネギ・韓国海苔胡麻と一緒に食べる。
当然ご飯と一緒にである。
あまりの旨さに、ご飯を掻きこんで頷きながら頬張ってしまった。



傳々ではかなり久しぶりに食べたミスジは、甘みがあって、蕩け具合も素晴らしい。
“よろにく”や”ジャンボ”のミスジには少し及ばないまでも、都内ではトップレベルの旨さで、傳々で食べたミスジの中では過去最高のミスジだろう。

カイノミは非常にジューシーで旨みがある。
バラの中ではさっぱりと食べられ、最近ハマリ気味の部位である。

もう一品だけ食べたいという私の要望に高矢店長が用意してくれたのは厚切りのリブ芯。
先ほどの薄切りで驚きの旨さを体験したリブ芯が、今度は贅沢にも厚切りで登場した。
高矢店長に絶妙に焼き上げられたリブ芯をカットすると、中は綺麗なピンク色である。
プレゼンテーションの段階ですでにノックアウトされていたが、一口食べて更にやられてしまった。
しつこさのないサシの甘みと赤身自体の旨みが混在して、何とも贅沢な一切れを味わった。
唯一残念だったのは、若干塩が強めだったので、もう少し塩を弱くして、山葵醤油で食べてみたかったということくらいだろう。



高矢店長の『お任せ』について、(お肉については)余すところなくお伝えしたが、肉好きであればぜひチャレンジして欲しいものだ。
好みの問題は必ずあると思うが、私の中では揺ぎ無いものになっているし、未経験者は焼肉の概念が変わることになるだろう。