No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2012年6月25日 銀座 うかい亭


『牛肉を食べる』という世界は実に奥深い。
そもそもの牛肉の質は勿論、様々な要素が絡み合うが、焼き方というのも非常に大きなファクターを占めるであろう。
部位やカットで最適な焼き方は変わるものだが、今回は鉄板での焼きの理論学ぶことに。
残念なことだが、世の中には牛肉を鉄板で焼くことに対して否定的な意見も存在する。
いくつか理由があるようだが、最も一般的に言われているのは『油っぽい』ということである。
そして、その主張の先にあるのは炭火で焼くことが最良であると。
本当にそうだろうか!?
確かに炭火は、牛肉を焼くことに対して優れている。
ただし、鉄板も牛肉を焼くことに対して優れているのではないだろうか。
もし鉄板焼きを『油っぽい』という理由で否定すると、極論ではあるが、すき焼きやフライパンで焼きあがる肉料理等も同時に否定されてしまう。
鉄板焼きは、その鉄板の厚さによってじっくりと長時間火入れを行いやすいだろうし、鉄板の位置の違いによって、お肉を休ませやすい。
また均一な火入れも可能だろう。
『油っぽい』という点に関しては、牛肉そのものの質によるもので、等級の高い去勢の牛肉の中には、しつこさを感じるものもあるだろう。
ただし、それは鉄板焼きでなくても起きる感覚であり、鉄板焼きでは、牛肉の質が特に出やすいということだと思う。
という事で、鉄板焼きの最高峰である"うかい亭"で、鉄板焼きの極意を学びたい。
学ぶといっても、目で見て、焼き手の技、イメージ、思いを感じ取り、盗むのだ(笑)
今回は銀座店なので、いつも担当してもらっている焼き手に担当してもらうことはできないので、銀座店に連絡を入れてもらい、絶対的に信頼できる焼き手に担当してもらった。
極上牛 テンダーロイン
極上牛は、"うかい亭"の契約牧場である田村牧場の田村牛。
内部がふっくらとしていながら、表面は程よくカリッとした焼き上がりで、旨みが肉繊維の1本1本に詰め込まれている感じ。
炉釜の焼き上がりとはまた違った極上の焼き上がり。
そして、肉自体の旨みも素晴らしい。

特選牛 サーロイン
今回の特選牛は、鹿児島県産黒毛和牛とのこと。
力強い甘みが広がるが、しつこさは全く感じられない。
赤身の味わいも濃厚で、赤身とサシのバランスが非常に良い。
焼き加減も絶妙。

極上牛 サーロイン
特選牛サーロインよりも繊細で上品なサーロイン。
ただ、特選牛サーロインのインパクトが強かった影響で、かなりおとなしい印象を受ける。
ハイレベルな食べ比べで、冷静ではいられなかったかも。

鉄板は牛肉を焼き上げるツールとして間違いなく優秀である、ということを証明してくれるステーキであった。
自分ならこう焼く!というイメージと焼き手の動きを重ね合わせ、イメージトレーニングをし、完成した作品を食べて感動する。
そんな、肉好きには堪えられない時間が流れていた。