No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

やまがた屋


10年以上前に緒方彩子著『うまい焼肉屋の歩き方』で知ってから行ってみたいと思い続けていた伝説の焼肉屋さん"やまがた屋"。
当時から場所は移転していて、ビルの3階にある店内はカウンター6席のみ。
そしてカウンターの中にはガラス張りの熟成庫が鎮座し、生の黒タンがこちらを威嚇するかのように何本もぶら下がってる。
ホルモンを焼かせたら右に出る者はいないと言われる店主・山形さんの至高のコースがいよいよ始まる。
キムチとチャンジャの盛り合わせ
前菜と言えど手抜きなし。

タンステーキ
山形さんがタンを1本熟成庫から取り出し、下側の筋を切り分けてから根元をカット。
その断面を見た山形さんは「ダメだ。。」と言って、もう1本タンを取り出してカットを始めた。
唖然とする私の前に出された2本のタンは確かに違う。
断面がぜんぜん違う。
納得しなければ、貴重な生の黒タンすら使わない。。。
こんな贅沢が他にあるだろうか!?



とことん贅沢にカットされたタンの根元を網に乗せる山形さん。
火の当たる場所を変え、網の位置を変え、パンパンに膨らむまでじっくりとタンと戯れている。
そうして焼き上がったタンの断面の美しさは他に類を見ないレベル。
焼きの技術だけでないのが山形さんの真骨頂。
タンを上側と下側で食べ比べろ、と言う。
脂のインパクト、筋の食感や滑らかさ、そして繊維の密度までが上側と下側で違う。
そしてタン自体の香りも旨みも文句の付けようがない。
満足度 5


ハラミ
ライブはまだまだ始まったばかり。
今度はおもむろにハラミの掃除を始める山形さん。
そして最も分厚い部分を塊で切り出し、表面をこんがりと、中はレアで仕上げる。
中間の茶色の部分をほとんど残さない素晴らしい火入れだ。
1つは山葵醤油、もう1つはウニ醤というレパートリーまである。
山葵醤油はあっさりとした味付けがハラミの野性味を削いで旨みが際立つ。
ウニ醤はハラミにコクをさらに加えて、インパクトの強い旨さ。
満足度 5


ハツ
サーロインでたまに見かけるように、背中の一部に脂を残した状態。
脂付きのハツは火の入れ具合が違うハツと脂を同時に焼くという難易度の高い部位だが、この日食べたハツはまさにその理想形。
有馬山椒との相性も良い。
満足度 4


テール
分厚くボリューム満点のテール。
食べやすく隠し包丁を入れられたテールはしっかりと焼かれていて、筋の甘みも十分に堪能できる。
満足度 4


キモグレンス
目の前で塊から切り出されるキモグレンス。
口の中で甘みが一気に弾け、ボーパミンが脳内で弾ける。
じっくり味わうのではなく、いきなり旨い。
満足度 5



茸のサラダ

シャトーブリアン
北海道産黒毛和牛の雌のシャトーブリアンはホイルを使って余熱で火入れが行われる。
肉繊維は繊細でありながら1本1本がしっかりと自己主張し、旨みもしっかりとしている。
〆に1つだけ正肉、しかもシャトーブリアン
この演出も素晴らしい。
満足度 5



生きる伝説の焼きを体験し、火入れの奥深さをまた1つ教わった。
特にホルモンの火入れは特筆すべきものだ。
東に"虎の穴"の辛さん、西に"やまがた屋"の山形さん、ホルモンを極めし焼き手ここにあり。