No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年8月13日 和牛焼肉 KIM


年々肉に対して我が儘になっていく。
肉に対する欲求が溢れるように湧き出し、それを鎮めるために日々お店に向かう。
そんな荒ぶる肉欲を完全に制圧するお任せコースに出会った。
“金竜山”、”ジャンボ”、”きらく亭”と共に白金焼肉激戦区の一角を担っている”キム”のお任せコースには昔から心揺さぶられ続けていたが、今回のお任せは過去最高という言葉が相応しいもの。
まずは胃袋の目を覚ますような前菜の数々。
頬肉は橙酢でさっぱりと仕上げられ、タンは素麺のようにカットされ茄子とトロロと一緒に食感を楽しませてくれる。
ハラミは塩ユッケにされ肉の味で直球勝負。




運ばれた瞬間に歓声が上がったのはヒレのローストビーフ
低温でじっくりと火入れされたローストビーフは、断面が見事な魅惑的なピンク色。
ちょっとでも焦って火入れを急げば、こんな断面に仕上げることはできないだろう。
しっとりとしていて絹豆腐のような繊細さが舌に広がる。


すでにテンションが最高潮に達していたが、ここでロースターに火が入る。
根元だけをくり抜いたタン元は小気味欲良い歯切れと共に芳醇な香りが鼻を抜ける。



分厚いハラミには岩塩が振られ、その荒々しい食感をさらに際立たせている。

焼肉では珍しい頬肉は大胆に包丁が入れられ、香ばしく焼き上げることで筋の甘みを存分に楽しめる。

流通上内臓に分類される赤肉の次は正真正銘の正肉。
ここで登場したのがとにかく豪快なシャトーブリアンの塊。
ある程度常温に戻されているが、極弱火で肉を動かしながら中心部に熱を伝えること30分、最後に表面に火を入れて焼き上がり。
我ながらこれ以上ない最高の火入れ。
さらに肉自体の旨みが半端ではない。
舌を覆い尽くすような旨みが溢れ出てくる。




カイノミや巻きも大判で焼き、最後にハサミで切り分ける。


コースの中盤でビーフシチューの小休止まで入る。
じっくりと煮込まれたシチューにはコクがあって、付け合せのパンが愛おしくなるほどの旨さ。


ここまで豪華なラインナップの後にヒレカツまで登場する。
シャトーブリアンとはまた違った適度な歯応えに衣が見事なアクセントになっている。

もちろんタレの焼肉も。
部位はランボソと肩三角。
これだけ食べてもタレの焼肉は外せない。


これだけ上質な雌牛を扱っているお店のハンバーグまで登場。
しかもフォアグラハンバーグだ。
ハンバーグの上にフォアグラが鎮座しているが、ハンバーグを切り分ければ、その中にもフォアグラが顔をのぞかせる。
単に豪華なだけでなく、ハンバーグとソース、そしてフォアグラのマッチングは料理長のセンスそのものだろう。

最後はトモサンカクとザブトンをパテ代わりにしたハンバーガー。
肉の旨さは言わずもがな、バンズまで料理長手作りで小麦の味がしっかりとして至福を約束してくれる1品。




過去に経験のない程のハイレベルなコース。
これは進化を続ける名店の証。
肉好きの胃袋だけでなく、心まで鷲掴みにする破壊力に完全に打ちのめされた。