No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年10月30日 TROIS FLECHES(トロワフレーシュ)


“あら皮”に代表される炉窯を使ったステーキ。
以前Beef-Lab.comでもその特性を取り上げたが、酸素の供給量を調整することで炎を抑えることができたり、輻射熱を効率的に使って理想的な火入れを実現することができる。
特にサシの入るロースのような部位については、炉窯以上の火入れは正直存在しないのでないかと思えてしまう。
高級ステーキ店、特に初めて行くようなお店は緊張してしまう事が多いが、"トロワフレーシュ"は店主・森地さんの人柄が滲み出た笑顔と心地良い言葉のキャッチボールで初めから緊張などせずに、森地さんの用意した極上のお肉を心から楽しむことができる。
黒毛和牛のヒレとサーロイン、短角牛のサーロインの3種が“トロワフレーシュ”の基本だが、この日は黒毛和牛のヒレで2種、サーロインで3種、短角牛のサーロインに川岸牧場の外ヒラまで揃った豪華な夜であった。
森地さんのオススメと自分の好みで選んだお肉は、特製の炉窯を自在に操る料理長・橋山さんの渾身の火入れでさらに芸術品へと昇華する。

まずは前菜からだが、私の場合、前菜もステーキにしてもらう。
短角牛のサーロインと川岸牧場の但馬牛の外ヒラといった赤身の強いお肉がパワフルな前菜と変貌する。
短角牛はサシが少ない分、ダイレクトに赤身の味わいが舌に届く。
個体差がかなりある短角牛だが、その平均値が高いのがやはり"トロワフレーシュ"かと。
川岸さんの外ヒラは、寝かせている期間が少し長かったようで、和牛の甘みよりは熟成香が瞬間的に広がる。
もちろん味は申し分ない。

メインはやはりステーキ。
ヒレ常陸牛と田村牛の食べ比べ。
常陸牛を1切れ口に運べば、香り豊かで繊細な食感に黙って頷くしかない。
その衝撃が納まる前に田村牛を食べれば、しっとりとジューシー、考えられない肌理の細かさと味の濃さがある。

サーロインは宮崎県さんと兵庫県産の戦い。
脂の甘みの強さだけでなく、舌の上での溶け具合といった脂質、サシの甘みに負けない自己主張する濃厚な赤身といった具合に、それぞれの良さが伝わる。


さらにデザートに”サカエヤ”でドライエイジングされたサーロインも。
黒毛和牛の風味は感じられないが、熟成香が強く、ドライエイジング特有の複雑な香りと味わいを楽しめる。

料理への愛情、そして肉への愛情、それらが重なり合うことで完成する"トロワフレーシュ"のステーキ。
最高の素材に最高の仕事を施す。
誰もができる事ではない。
しかし森地さんと橋山さんならできる。
"トロワフレーシュ"はこのステーキと言うシンプルな世界でまだまだ進化を遂げていくだろう。
(短角牛のサーロイン)

(川岸さんの外ヒラ)

常陸牛のヒレ

(田村牛のヒレ

(宮崎県産のサーロイン)

兵庫県産のサーロイン)

ドライエイジングのサーロイン)