No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年3月4日 にくの匠 三芳


『和』の食材である和牛を和食というジャンルで追求した場合、現時点で断トツの独走状態なのが”三芳”だろう。
三芳”の店主・伊藤さんの料理を食べる度に、和牛の無限の可能性を感じずにはいられない。

お肉のお出汁
コンソメのようなインパクトはないが、しみじみと旨みが広がる牛肉の出汁が素晴らしく、フキノトウのアクセントもバッチリ。
満足度4

タンの昆布締め
昆布締めされたタンは、アミノ酸が幾重にも重なって、ねっとりとした旨みがあるのだが、今回はそれに特大の天然トラフグの白子がたっぷりとオンされている。
今まで白子と肉がここまで絶妙なマッチングをするとは知らなかった。
塩昆布のアクセントまで含めて完璧すぎる。
満足度 5+



イチボ
"くいしんぼー山中"で食べた福永さんの近江牛と個体のイチボが"三芳"にも。
屠畜2日後のイチボは信じられない程ぷりぷりとした弾力を持ち、その細胞1つ1つがまだ生きているようだ。
そして肉の味の濃さは超ド級
満足度5+


内ヒラの漬けの山掛け
こちらの内ヒラも同じ福永さんの個体。
フレッシュな香りを感じさせる内ヒラにまろやかな山掛けが絡み、舌触りと旨みが昇華する。
満足度 5


ミスジのお碗
蛤出汁に春を感じさせる筍があわされる。
こういった組み合わせ、出汁自体の旨さに和牛を扱う和食の可能性を感じずにいられない。
満足度 4

内ヒラとトリフの炊き込みご飯
部屋いっぱいに満たされるトリフの芳醇な香りと、トリフに決して負けない内ヒラの旨みのマリアージュが最高。
満足度 5


白子の牛脂揚げ
以前に海老芋の牛脂揚げに唸ったことがあったが、トラフグの白子の牛脂揚げとは。。。
濃厚でまろやかな白子を包み込む、香り豊かな衣。
それを更に引き立てるのはトリフと塩分のあるキャビア
史上最高の揚げ物かも。
満足度 5

タンの冷菜
食感のコンストラスト、甘みと酸味と塩気のマリアージュ
主役のタンがしっかりと自己主張している。
満足度 4

しゃぶしゃぶ
近江の中川さんが肥育したサーロインのしゃぶしゃぶ。
脂のインパクトはないが、旨みが後からぐっと押し寄せてくる。
満足度 4


ステーキ(F1のサーロイン)
F1はF1でも何と月齢84ヶ月の雌で、経産ではなく未経産とのこと。
想像するに、黒毛和牛用の借り腹用だったが、着床しなかった為にここまで月齢が伸びたのではないかと思われる。
今まで食べた中では最も旨いF1だが、黒毛和牛と比べると肉繊維の粗さや、味の淡白さは否めない。
満足度 4





ステーキ(近江牛リブロース
中川さんの肥育した近江牛の雌。
赤身とサシのバランスが程よく旨みも十分。
満足度 4





ステーキ(神戸ビーフのザブトン)
川岸さんの肥育した神戸ビーフの雌。
サシのファーストインパクトが強いが、すっきりとした後味。
一般的にザブトンはそれほど味が強い部位ではないが、この個体はそれが当てはまらない。
この個体のロース芯を食べてみたかった。
満足度 4




ステーキ(近江牛のイチボ)
福永さんの近江牛の雌。
肉の味の濃さは一番。
ただ食感が強いので、ステーキにするには若干厚すぎる。
やはり福永さんの肉に関しては、"くいしんぼー山中"のステーキの厚さが究極なのかもしれない。
満足度 4



現時点で私が和食に求める思いを実現している唯一の職人さんは伊藤さんだけかもしれない。
それほど素晴らしい料理の数々。
伊藤さんの料理を通じて、和牛の可能性を追い続けていきたい。
「和牛はその名の通り、『和』の食材。
その『和』の食材を昇華させるのが和食(日本料理)であるはず。
魚介類や野菜類へのアプローチはどこまでも深く、素材への拘りや多彩な調理法、どれも心から素晴らしいと感じることができる。
それに比べて、和牛をはじめとした肉へのアプローチはどうだろうか。
素材選びは魚介類ほどには至らず、調理法もシンプルな炭火焼きの枠を出ていないものがほとんどのように感じる。
これが本当に残念でならない。
本物の和食(日本料理)の料理人が、本気で和牛を扱ったらどんな料理ができるのか。
それを見てみたいし、食べてみたい。」