No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年8月20日 くにもと 本店


私の持論を言わせてもらうと、最終的に焼肉はタレに行き着く。
塩で食べるなら焼肉のような薄切りよりもステーキのような厚切りで食べる方が適しているだろう。
そして”くにもと”のタレには私が焼肉に求める究極の姿がある。
方向性の違うモミダレとツケダレの絶妙なバランス、和牛の旨みをより引き立てるツケダレの酸味など、 “くにもと”のタレは肉本来の持ち味を消すことなく見事に引き立てるのだ。
そして脂の甘みや肉本来の味わいを引き立てるにも、素材そのものが良くなくては引き出しようがない。
だからこそ、最高のタレを持つ”くにもと”には最高の肉が必要なのだ。
カイノミ(上等セット、塩)
奥州牛のカイノミは塩で。
適度な判と厚みがあり、口の中いっぱいに肉汁が広がるのだが、その味が実に深い。
じっくりと飼い込まれた個体だけが持つ味の良さが際立つ。
食感もカイノミとは思えないほど滑らかで上品。
満足度 5

バラ(上等セット、塩)
昔の焼肉と言えばカルビ、そうバラが主流だったが、その脂のきつさから最近はバラが敬遠される場合も多い。
しかし今回の隠岐牛のようなバラを食べると脂のきつさなど微塵も感じられず、切れの良い甘みと肉本来の旨みを楽しむことができる。
満足度 4

ランプ(上等セット、塩)
ランプも隠岐牛。
適度に水分が飛んでいるのだが、決してパサついているわけではなくジューシー。
人に媚びることを知らない、力強さを感じさせる旨みがある。
満足度 4

内モモ(上等セット、タレ)
焼肉の真髄がこの1切れに集約されている。
黒毛和牛だからこその上品な食感、血統から肥育方法まで拘り抜かれた結果肉に宿る旨み、タレがそれら全てを引き立て昇華。
ちなみに隠岐牛。
満足度 5

芯玉(上等セット、タレ)
同じ隠岐牛の赤身でも内モモとはまた違った食感・味わいの芯玉。
どちらも旨い。
満足度 4

サーロイン(上等セット、タレ)
“くにもと”のタレが赤身の旨みを引き立てるだけではない。
ツケダレの酸味が霜降りの甘みをよりまろやかに仕上げてくれる。
田村牛のサーロインは身体中が脱力するほどの旨さ。
満足度 5

カイノミ
追加オーダーしたのは盛り合わせのカイノミとの比較で田村牛のカイノミ。
カイノミらしい繊維質を感じる食感で、武骨でありながらしっかりとした味わいの余韻が残る。
満足度 4

リブロース
こちらも田村牛で、部位的には巻き。
ロースの中で最も霜降りな部分の巻きをとんでもない分厚さでカットされているのだが、驚くことに脂の重さが一切なく、程よい甘みとジューシーさが素晴らしい。
脂の質の良さとタレのバランスの成せる業であろうか。
満足度 4

元々”くにもと”が有名になった頃メインで使用されていたのは淡路牛。
職人さんの研ぎ澄まされた技術でカットされた但馬血統の肉が”くにもと”の秘伝のタレを吸って、これ以上ない地点まで昇華したものだ。
それがある頃から満足のいく淡路牛を仕入れることができなくなり、使わなくなってしまった。
それでも、毎回小躍りしてしまうほど旨い焼肉が食べれていたのだが、正直に言えば淡路牛を使っている頃が1番好きだった。
そして今回、あの淡路牛を使っていた頃の”くにもと”を超える過去最高の”くにもと”に出会ってしまった。
岩手の佐々木譲さんの奥州牛、鳥取の田村牛、島根の隠岐牛といった具合に、血統は但馬の血が濃く、一般的な肥育期間よりも長期にわたって飼い込まれた雌牛だけが取り揃えられている。
最高の技術とタレを持った、最高の職人が、最高の素材を手に入れたのだ。
あれこれと流行を取り入れているわけではなく、ひたすらに王道を極めんとする姿勢には感銘を受ける。
オーソドックスな焼肉として見るのであれば、”くにもと”こそタレで食べる焼肉の究極ではないだろうか。