No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年7月11日 一輪咲いても花は花

もし”一花”を知らなかったとしたら、それは残念でならない。
もし”一花”を知っているのに行ったことがないとしたら、それは何かを間違えてるかもしれない。
広告媒体への露出が少ないが、良質なホルモンを中心に、料理長の創作料理を目当てに店内はほぼ常連さんで賑わっている。
この日のスタートは揚げ物から。
ホルモンタツタはシマチョウの竜田揚げのこと。
脂がたっぷり付いたシマチョウを更に油で揚げる行為にいささか引きがちだが、食べればその軽さに驚く。
シマチョウ特有の甘みも秀逸。

タンからはタン筋部分を煮込んでから唐揚げにしたもの。
柔らかでジューシー、何より下味の良さが効いていて、他のお店で食べたことがあるようなタンの唐揚げとは比べ物にならない旨さ。

一瞬ここが焼肉屋であることを忘れてしまうのがホルモンギョウザ。
小龍包の様な肉汁に火傷しそうになるが、身体の底からエネルギーが湧き上がるような錯覚に陥る。
歓楽街である湯島の街で一汗かいた男女にぜひ食べてもらいたい一品だ。

刺し系の盛り合わせも、随所にオリジナリティが感じられる。
定番のレバやハツはバーナーでしっかりと炙ってから。


ミノは梅水晶で出され、さっぱりとしていて、食感も素晴らしい。

タタキにされたハラミは、細かなサシが入った上物で、甘みが舌の上で転がる。

ユッケの様に見えたのがタンのなめろう
コリコリとした食感になめろうのコクがマッチする。

七輪が無くてもテンションは最高潮であったが、ここからいよいよ焼きに入る。
タンの盛り合わせはとんでもなくド迫力なタン元、タンの真ん中辺りを使ったネギタン、タン筋。

タン筋には、湯島の街を意識した様な深いビラビラのカットが施され、料理長である横関さんの想いが伝わってくる。
当然のことながらこのタン筋は旨い。


たっぷりのネギと胡麻油を包み込むネギタンは郷愁の味。
表面を香ばしく焼き、内部を蒸し焼きにすれば、ネギの甘みとタンの旨みが絡み合って最高の旨さ。
昔はそのままだと臭みのある輸入のタンですら、こうやって食べると異常に旨く感じたのを思い出す。



タン元はド迫力のカット。
むっちりとした塊に歯を立てれば、口の中は柔らかなタンで占領される。


ホルモンがメインと思いきや、シャトーブリアンまであるのにビックリ。
しかも小振りな判で、上品な出で立ちだ。
肉自体も繊細で味わい深く、さらにおろしゴマダレとの相性も抜群。
これはお代わりしたくなる旨さ。
湯島の歓楽街で働く女性にいいカッコするのであれば、こういったアイテムもアリだろう。

“一花”の真骨頂であるホルモンは言わずもがな素晴らしい。
ジューシーで肉々しいテール、プルンとして甘みの強いシビレ、そしてザクザクの食感が心地良い上ミノ。
どれ一つ欠けることも許せない旨さ。



だが、”一花”でホルモンを食べるのであれば”傳々”譲りのシマチョウは絶対に食べなくてはならない。
人間であれば即入院レベルの内臓脂肪が付いたシマチョウは、七輪の上で勢いよく炎を上げる。
真っ白な脂はだんだん透明感を出してくるが、ここが食べ頃。
たっぷりと乗せられたネギの食感や甘みで、よりシマチョウの甘みが引き立てられる。

サーロインは焼しゃぶとして。
卵黄に潜らせコクのある甘さを味わう。

この日の〆はハラミの蒲焼き。
蒲焼きのタレで焼かれるハラミは、時々追いダレが施され、鰻の蒲焼きのようだ。
サシがしっかり入ったハラミの蒲焼きには山椒がこれまたよく合う。


鮮度の良い素材、オリジナリティ溢れる料理の数々、そして懐に優しいお会計。
肉好きの味方が湯島にある。
こんな素晴らしいお店を知ってる常連さん達だけで楽しむには勿体無い名店だ。