No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2012年6月14日 人形町今半 本店



今ほどドライエイジングという言葉が一般的でなかった頃から、ドライエイジングの研究を重ねていた方がいる。
しかもホルスタインや短角牛といった赤身の多い牛ではなく、黒毛和牛で。
その方こそ"人形町今半"の高岡さんである。
焼肉に活かす熟成肉、特に薄切り、タレで食べる焼肉に活かす熟成肉のヒントを得る為に、ドライエイジングによるすき焼きの食べ比べを行った。
しかも、多忙な高岡さんに予定をつけてもらい、ドライエイジングとは何なのか、といった話をうかがいながらである。
ローストビーフ握り
これは通常の熟成がされたお肉で。
甘みのあるお肉とシャリのバランスが絶妙で、お肉の味がより活きる。

ステーキ
通常の熟成のロースとドライエイジングされたロースの食べ比べである。
しかも、今回食べるドライエイジングされたお肉は、通常よりも遥かに長く熟成させたもので、なんと210日!!
まずは、通常の熟成から食べてみるが、黒毛和牛らしい何とも言えない香りが鼻腔を抜ける。
香りの次は、しつこさのない甘みが口の中で踊りだす。
続いて、ドライエイジングされたお肉。
さすがに210日というだけあって、熟成香がかなり強い。
ただ、腐敗や酸化といった異臭ではなく、あくまで熟成によるもので、嗜好品といった感じ。

すき焼き
"人形町今半"のすき焼きは、焼くというよりも煮る感じで、まさに関東風。
牛肉記念日以来の"人形町今半"でのすき焼きに気分が高揚する。
すき焼きも、まずは通常の熟成のものから食べるが、お肉、割下、卵が三位一体の完成度を見せてくれる。
口の中で、卵のとろみと一緒に、お肉も蕩けていく。
柔らかいから旨いのではなく、蕩ける瞬間に広がる甘みと旨みが素晴らしいのだ。
続いて、ドライエイジングされたお肉は、通常の熟成よりも赤身の色が濃く、深みがある。
同じように焼かれたお肉は、口に近づけた瞬間に、その熟成香が一気に押し寄せる。
口の中に入れれば、熟成肉特有の旨いが広がる。
ただ、ドライエイジングされたお肉をステーキで食べた時は、熟成特有の風味と味わいが強烈に押し寄せたが、すき焼きで食べると、割下、卵と混ざり合い、かなりバランスが良くなる。




これが食べたかったのだ。
これなら焼肉に活かせるはずだ。
今回は210日熟成ということで、かなりハードな熟成肉であったが、一般的な40日から60日程度の熟成肉も食べ比べてみたい。
これは『第2回焼肉のための熟成肉勉強会』で実現できるように計画を立てねば。
それにしても今回の貴重な体験をさせていただいた"人形町今半"の高岡さんには感謝である。