No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年10月28日 炭火焼 七厘


三ノ輪の伝説・"炭火焼 七厘”。
2014年10月29日が最終営業日。
かつては輸入牛をメインに扱う下町のありふれた焼肉屋さんだった”七厘”を日本屈指の名店に押し上げたのは店主・中原さんのひたむきな努力と信念に他ならない。
全くの未経験な状態から、芝浦に通って肉の扱い・仕入れを学び、輸入牛から和牛、そして雌の一頭買いを経て、抜群の目利きによって焼肉に最も合う枝肉を仕入れることができるようになった。
言葉にしてしまうと伝わらないかもしれないが、その歩みを想像すれば、如何に困難な道であったかが容易に想像つくだろう。
それは仕入れだけでなく、繊細で素材のポテンシャルを引き出すカットや味付けについても言える。
私が初めて”七厘”を訪れたのは2008年8月21日。
開店直後に1人で訪れ、幻のタンとハラミ、トモサンカクをオーダーした。
特に印象的だったのは幻のタンで、今まで食べたことのない旨みと食感に驚かされた。
それから通うごとに進化を続ける姿を目の前の肉を通して見せつけられてきた。
その勢いは最終営業日であっても変わることはなかった。
七厘ボール

幻のタン
相変わらずの旨さ。
ちなみに2008年の初訪問時はタン元とタン筋の2種類の盛り合わせで、値段は覚えてないが4切れずつというアンビリバボーな1皿であったww


サーロイン
中原さんの目利きの凄さが一番分かるのがこのサーロイン。
肉の香り、繊細な舌触りに強烈な肉本来の味わいが共存している。

ハラミ
犬歯で分厚い肉繊維を千切る。
そして奥歯で獲物を何度も噛み締める。
歯茎と伝わり広がる旨みに言葉を失うしかない。

リブカブリ
歯応えのあるカブリをここまで食べやすくできるのは、中原さんのカットの冴えがあるから。

ミスジ
ミスジらしい滑らかな食感。

ランボソ
サシではなく赤身の魅力が凝縮したような力強い旨み。

トウガラシ
味に深みのある極上品。

ヒレ
分厚いヒレを今回はプレーンで出してもらう。
満足のいく焼き上がりのヒレは芳醇な香りが鼻に抜け、瑞々しい肉繊維が崩れ落ちていく。



切り落とし
史上最強の切り落とし。
他のお店では真似できないレベル。

最後の最後まで中原さんのまざまざと凄みを見せつけられた。
ここに伝説第一章完結。
今後は市ヶ谷の地にて伝説第二章が幕を開ける。
肉好きは"炭火焼肉なかはら"を括目して見よ。