No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年3月23日 炭火焼肉 なかはら


焼肉業界随一の肉質を誇る”なかはら”。
その“なかはら”の裏メニューが、カウンターで食べるステーキだ。
常に満席のテーブルを後目にカウンター、先客達の注文に対応している中原さんの目の前に陣取る。
目の前では中原さんによって、スピーディーかつ丁寧に肉がカットされている。
その包丁さばきに目を奪われるが、同時に驚かされるのが大胆な掃除。
口の中での食感を考えた末の掃除だろうが、ここまで贅沢に削ぎ落としているお店は見たことがない。
とにかく中原さんの手元を見ているだけであっという間に時間が過ぎてしまう程芸術的な仕事ぶりだ。
そして一通りカットが終わった頃、遂に裏メニュー用の肉が登場する。


ガリ
当初はサーロインとシャトーブリアンの2種類の予定だったが、先客達用の肉を見る私の目があまりに哀れだったのだろう。
「サガリも食べる?」という優しい言葉に大きく頷いてしまった。
ステーキは目の前に置かれた七輪を使い、中原さんによって焼き上げられる。
表面は香ばしく、中はレアに仕上がったステーキから放たれる鉄分は舌に絡みつき、肉汁に溶け込んだ旨みの純度が高い。
奥歯に力を込めれば、その肉汁を守ろうと奥歯を押し返してくる肉繊維が実に心地良い。
肉全体から野性味が溢れるようなステーキだ。
満足度 4


サーロイン
田村牛のサーロインに包丁を当てた中原さんに「どの位食べる?」と聞かれる。
これは何気に怖い質問w
サーロインに真っ直ぐ包丁が入り、ストンっと1枚のステーキカットが倒れ、空気に触れた断面の肉色が良い。
そしてこれも網の上へ。
厚みのあるサーロインが網に接している面からチリチリと肉が焼ける音が漏れる。
焼き上がったサーロインは、噛んだ瞬間に甘みが舌の上を走り、後から肉の旨みが追いかけてくる。
1人で食べるにはかなりの量だが、これをペロリと食べれるのは肉質の良さの証明。
満足度 5





シャトーブリアン
中原さんの素晴らしい焼きに触発されて、シャトーブリアンは自分でトングを握る。
見えない熱の波を必死にイメージしながら焼き上げた結果、なかなか上出来。
前歯を吸い込むような繊細な肉繊維に、口の中で膨らみ続ける旨みの余韻。
繊細さと大胆さが共存した最高の肉だ。
満足度 5



ガーリックライス
ステーキのお供に出してもらったガーリックライス。
実はガーリックライス大好きなのだが、正直旨いと思えるガーリックライスは非常に少なく、個人的なキング・オブ・ガーリックライスは”うかい亭”のガーリックライス。
そして、”なかはら”のガーリックライスも本当に旨かった。
モチモチ感は”うかい亭”に及ばないものの、ふんわりと香るガーリックが食欲をそそり、お代わりせずにはいられない禁断の味わい。
我が生涯で2番目に旨いガーリックライスとの衝撃的な出会い。
満足度 5

食べ終わってお腹はパンパン。
だが、心はもっとパンパン。
中原さんの仕事を目の前で見ながら、その作品を食べる。
あらためて、その素晴らしさと凄みを感じた貴重な夜だった。