No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2015年9月2日 代官山 焼肉 かねこ


『良い肉は塩で食べるのが一番で、タレで食べると肉の味が分からない。』
一般的に世の中に広まっている定説の一つだと思うが、本当にそうだろうか!?
色々な意見があるのは承知だが、私はそうは思わない。
もちろん、良い肉を塩で食べるのは旨い。
肉の甘みや味わいがより際立つからだ。
しかし極論を言えば『良い肉は何もつけなくても旨い。』
何も手心を加えずとも、素材そのものがしっかりとした甘みや滋味深い味わいを伝えてくれるものだ。
そしてもう一つ言えることは『肉の味を消すことなく、本来の持ち味を引き立てるタレがある。』ということ。
その最たるお店が”くにもと”ではないだろうか。
方向性の違うモミダレとツケダレのバランス、和牛の旨みをより引き立てるツケダレの酸味など、”くにもと”のタレには私が焼肉に求める究極の姿がある。

私の持論では、焼肉というのはタレに尽きるのだ。
塩で食べるなら焼肉のような薄切りよりもステーキのような厚切りで食べる方が適しているように感じる。
“くにもと”のタレは肉の持ち味を引き立てると書いたが、それは良い肉を使わなくてはいけないということでもある。
脂の甘みや肉本来の味わいを引き出すにも、素材そのものが良くなくては引き出すものがない、というわけだ。
そんな”くにもと”で修行を積み、今年独立したのが代官山の”かねこ”。
店主・金子さんは、“くにもと”でもタレを仕込んでいただけあり、”かねこ”には”くにもと”同様、肉の味を引き立てる最高のタレが存在する。
ローストビーフ
"かねこ"の前菜と言えばローストビーフ
決して柔らかく蕩けるわけではない。
かと言って硬いわけでもない。
程よい噛み応えに絶妙な塩梅の味付け。
それらが肉の味を更に引き立ててくれる。
満足度 4

ランプ(盛り合わせ、塩)
兵庫県産但馬牛をちょい厚切りと言えるカットで。
噛み締めると肉繊維が束になって必死に抵抗するが、すぐに大量の肉汁を放ちながらこちらの軍門に下る。
満足度 4


リブキャップ(盛り合わせ、塩)
近江牛のリブキャップは、カブリにしては厚めにカットされている。
硬さを覚悟して食べるが、繊維がほどけ甘みと滋味深い味わいがぐんぐん広がる。
満足度 5

クリノミ(盛り合わせ、タレ)
薄いがこれでもかと大判にカットされたクリノミは、口の中を肉汁で満たし、その上品な旨みを喉全体を覆い尽くす。
タレとのマッチングは怖いぐらいにハマってる。
ちなみに田村牛。
満足度 5


ヒレ(盛り合わせ、タレ)
田村牛だからと言って全部が全部旨いわけではないかもしれない。
しかし、この田村牛のヒレがどこまでも繊細で旨いのは事実であって、否定する要素が何一つないのだ。
満足度 4


リブ芯(盛り合わせ、タレ)
塩で食べたリブキャップと同じ近江牛の芯部分。
舌の上で蕩けるサシは、脂質の良さと最強のタレで甘みの輪郭がはっきりとしていながら、後に全く残らない。
サシに負けない肉の旨みがあるのが最高のロースの証だろう。
満足度 5


イチボ(盛り合わせ、タレ)
絶妙という言葉がぴったりで、絶妙な厚さ、絶妙なタレ、そして絶妙な私の焼き。
この全てが笑みをもたらす。
ちなみに但馬牛。
満足度 4

クリノミ
あまりに旨くてお代わり。
満足度 5

切り落とし
切り落としはお気に入りの辛味で。
これだけ厳選された仕入れなので、切り落としがまずいわけがない。
このままで食べれば辛い中に甘みのグラデーションを感じる旨さ。
更に盛り合わせで肉の旨みが染み出たツケダレに潜らせると辛みが緩和され、よりまろやかに昇華される。
絶対的におすすめ。
満足度 4

巻きロース
追加で田村牛の巻きロースを。
カリッと焼かれた表面に歯を立てれば、中は繊維質を感じさせながらもトロリと舌を惑わせる。
脂の軽さがあるからこそ際立つ旨さ。
満足度 4

リブゲタ
脂の強い部位だが、それをまろやかに、そしてさっぱりと仕上げてくれるタレの凄さがよく分かる。
肉の味も力強い。
満足度 4

肉の品質が素晴らしい。
タレが抜群に旨い。
肉が旨いからタレが活きる。
タレが旨いから肉が活きる。
最高の肉を仕入れ、最上のタレを作り上げるのは金子さん。
金子さんの舞台は何度でも、すぐにでもリピートしたい。