No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年12月9日 にくの匠 三芳


『師走は借金してでも肉を食え』
昔の和牛生産者は兼業していた稲作がひと段落した時期に牛を出荷していた。
そして和牛の共進会はこの時期に行われている。
だからこそ拘りある生産者は1番自信のある牛を出荷する。
この時期はお歳暮や年末年始の関係で1年で最も牛肉の需要が高い。
だからこそ拘りある肉屋はどんなに高くても1番旨い牛肉を競り落とす。
拘りある飲食店は生産者や肉屋そしてお客の為に痩せ我慢してでも最高の牛肉を仕入れる。
つまり1年で1番旨い牛肉が市場に出回るのは12月。
この時期に全力で食べずしていつ食べるのだろうか!?
そして川岸さん曰く「10年に1度」という個体のポテンシャルを100%以上に引き上げるには最高の料理人に託される。
川岸さんが肥育した38ヶ月 神戸ビーフの雌
個体識別番号1375153773


シンプルであり、牛肉料理の答えの1つであるステーキを除き、全てのジャンルの料理を通して、ここまで牛肉という素材のポテンシャルを引き出し、和牛の旨さを追求したお店は”三芳”以外にないだろう。
お肉のハリハリ仕立て
牛肉で取った出汁は香りがよく、すっきりと喉を通る。


タンの昆布締め
三芳”で唯一毎回出てくる料理がこのタンの昆布締め。
水分が抜け、昆布の旨みが合わさったタンは濃厚で複雑な旨みを発する。


イチボのタタキ
赤身とサシのバランスが絶妙なイチボ。
表面を炙ってタタキにすることで、香りが際立ち、肉の味もより膨らむ。
更にアルバ産とピエモンテ産の2種類の白トリュフを削り、芳醇な香りに酔いしれる。
イチボの脂が白トリュフに馴染んだ瞬間が至福の瞬間。



海老芋饅頭
コッペ蟹をすり潰した海老芋で包み、油で揚げて白味噌のお椀に。
海老芋饅頭には一切牛肉が入っていないのに、食べると不思議と牛肉の味がする。
これは海老芋を揚げる油に、川岸さんの神戸ビーフのロースの脂で作ったヘッドが使われているから。
ホクホクとした海老芋の甘みに濃厚な白味噌の甘み、そして鼻腔をくすぐる神戸ビーフのヘッドの香り。
目に見えない牛肉料理は五感をフル稼働させて楽しむ。



サーロインの飯蒸し
月齢38ヶ月の川岸さんの神戸ビーフサーロインを使った飯蒸し。
もちもちとしたご飯にサーロインが極上のソースとなり、一緒に味わう黄身醤油、ベルーガキャビア、白トリュフが完璧なハーモニーを奏でる。

カイノミ
月齢38ヶ月の川岸さんの神戸ビーフカイノミ。
しかもヒレにくっ付いている最も味わい深い部位を炭火で焼き、下仁田ネギと九州の甘い醤油で食べる。
ヒレの様な繊維質の感じやすさがあり、その肉繊維からはどこまでも旨みのスープが溢れ出てくる。

しゃぶしゃぶ
38ヶ月の個体のサーロインを出汁に潜らせ、肉の味と香りをより一層引き立てる。
一般的なしゃぶしゃぶ用よりも厚めにカットされたサーロインだからこそ、肉の味とコクが舌を覆い尽くす。




シャトーブリアン
38ヶ月の個体のシャトーブリアンは炭火で焼いてステーキに。
焼き上がったシャトーブリアンは内部に詰まった肉汁でパンパンに膨らんでいる。
そこに伊藤さんが包丁を入れた瞬間に周囲を包み込む見事な和牛香。
Too muchな熟成では決して感じることの出来ない香りの肉片はシルクを1本1本重ね合わせたように繊細で、それを噛み切ることで口の中を満たす旨みのエキスは最上級。











サーロイン
38ヶ月の個体はシャトーブリアンだけでなくサーロインもステーキで。
炭火で表面がカリッと仕上がったサーロインは見事な火入れ。
BMS11という事で脂の脂質が良くても脂のインパクトは若干感じるが、赤身の味の濃さが全てを消し去るほど強烈。







すき焼き
今回の個体は屠畜から1ヶ月近く経っているのだが、ヒレやサーロインは真空パックをしてあるので熟成感はほとんど感じられない。
それとは別に真空せずに寝かせていたリブロースがある。
これをすき焼きにすると、寝かせたことで繊維がほぐれやすくなっていて、口の中で至福の食感が生まれる。
また、たっぷりと削られた白トリュフが脳にありえない刺激を与える。





伊藤さんが繰り出す数々の牛肉料理。
これを超える牛肉料理が食べれるお店など想像もつかない。
これからの”三芳”の進化は、”三芳”自らへの挑戦なのだろう。