No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2017年10月2日 焼肉 しみず




今までひたすら焼き歩いたが、タン、ハラミ、そして正肉の肉質に関して、正直”しみず”を超える焼肉屋を東京で見たことがない。
食べ込んでいるマニアや同業者ほど、その凄さに気付き、驚くだろう。
焼肉屋をオープンする前から何十年も付き合いのある老舗の内臓問屋には毎日顔を出す。
配達してもらうのが当たり前の業界で、仕込み前の時間に自ら取りに行くのだ。
この地味な作業を続けることで、仕入れるタンとハラミの質と量はここまで上がった。

そのタンの凄みを最も感じられるのが特厚タン。
通常のメニューにある厚切りタンですら、他店と比べ物にならない厚さだが、特厚タンの厚みはその2倍。
焼きの難易度の高い為、店主に認められた常連しか出してもらえないメニューだが、既存のタンの概念をぶち破る食感と味わい故、出来る事なら全ての肉好きに食べて欲しい。




フレッシュで臭みの無いサガリは塊焼きがオススメ。
均一な火入れと言うよりは、あえてグラデーションを残す火入れが、サガリのプリプリとした食感を最大限活かす。


ハラミは中途半端なレアではなく、厚切りでしっかりと火を入れることで、ポテンシャルが100%感じられる。
そしてニンニクとの相性も抜群で、ハラミの中に詰まったスープの様な旨みを際立たせてくれる。

“しみず”が凄いのは、内臓だけでなく正肉も凄いところ。
日によって違うが、この日は田村さんの神戸ビーフ、つまり純但馬血統の田村牛。
東京の飲食店全体で間違いなくトップレベルの仕入れと言える。
この神戸ビーフリブロース芯を分厚くカット。
肉の声を耳を傾け、強火と弱火を使い分けながら、ポテンシャルを引き出す。
その完成品の味わいには全員息を飲むほど。
肉汁が舌に触れた瞬間に伝わる上品で力強い旨み、繊細で奥歯で簡単に千切れる肉繊維、そして「本物のあっさり」とはどういったものなのかを教えてくれる上品な脂。
これほどの味わいがピュアで濃厚なステーキが他にあるだろうか。
2倍や3倍の値段を出してもそうそう出会えるものではない。
もちろん厚切りではなく、薄切りでも素材の凄みは伝わる。



タン、サガリ、ハラミ、リブ芯、どれも躍動感溢れる食感と濃厚な旨みがある。
また、この日は初めてのすき焼き。
神戸ビーフを贅沢にリブロース芯のみくり抜いてある。
高温になりすぎないように調整された南部鉄器のすき焼き鍋にリブロース芯を載せ、特製の割下をかけると、ふつふつと肉が躍り出す。
裏返して口に運べば、意識を失うほどの衝撃。
笑いが止まらない旨さ。
肉の味わいがこれほど主張してくるすき焼きが今まであっただろうか。
あまりの旨さにお代わりをすると、リブロース芯の他にリブロース巻きまで。
この巻きも別次元の味わいで、純但馬血統でなければ味わうことの出来ないプリプリの最高の巻き。
とにかく衝撃的なすき焼きとの出会いだ。




もちろん他にも堪能。



〆のハラミ筋は”虎の穴”のダメ人間セットを彷彿させる暴力性が潜んでいて、身体がご飯を欲して仕方ない。

ここまで食べてしまうと、もはや感動しかない。
素材だけでなく、味付けまで恐ろしいほど進化した”しみず”。
肉好きにこれ以上のパラダイスがあるとは思えない。